トランプ氏、トルコのロシア接近容認 NATOと溝

2019/10/24 19:30
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【ブリュッセル=中村亮】トランプ米大統領がトルコのロシア接近を容認している。23日にはシリア情勢の安定に向けたロシア・トルコの安全保障協力に賛同し、トルコに科した経済制裁を解除した。トルコは米軍の中東政策の要で、強硬姿勢を打ち出しにくい面もある。米トルコと欧州の間で、ロシアの脅威に対する認識は隔たりが鮮明になり、北大西洋条約機構(NATO)の大原則である共同防衛にも影を落とす。

トルコのエルドアン大統領(写真(左))は、ロシアのプーチン大統領と歩み寄りを見せている=ロイター

トランプ氏は23日、ホワイトハウスで記者団に対し、トルコがシリア侵攻を停止したと評価し、停戦が恒久化したと発表した。同氏は「シリアと中東の未来にとって大きな進展だ」と強調した。シリア侵攻後に科したトルコのアカル国防相ら3閣僚に対する経済制裁を解除した。

トルコは22日、軍事作戦の停止に向けて、ロシアとシリア北部での安保協力で合意した。トルコはテロ組織とみなすシリアのクルド人勢力をロシアと連携し国境付近から立ち退かせる。国境付近では治安維持のためロシアとの共同監視活動にもあたる。米国の制裁解除はトルコ・ロシアの安保協力がシリア安定に寄与すると認め、両国の接近に事実上のお墨付きを与えたものだ。

トルコはこれまでもロシアとの安保協力を進めてきた。7月にはロシア製のミサイル防衛システム「S400」の搬入を始め、来年中に配備を完了する。トランプ氏は、オバマ前政権が米国製のミサイル防衛システムの売却を拒否し、トルコがロシアと防衛協力を進めたと主張。ロシアからの軍事装備品購入に経済制裁を科す法律の適用を保留し、トルコのS400搬入を黙認している。

米軍はロシアとの接近を懸念しつつも、トルコと関係を決裂させられない事情もある。過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆作戦はトルコ南部のインジルリク空軍基地を拠点に実施してきた。同空軍基地には核兵器50発が配備されているとされ、イランなどに対する抑止力の役割も果たしている。トルコ東部にはNATOの弾道ミサイル防衛のレーダー施設もある。

トランプ氏とトルコのエルドアン大統領の個人的関係は改善に向かいそうだ。米国が2014年にIS対策でクルド人勢力と協力したことでエルドアン氏は米国に距離を置き始めた。トランプ氏がシリア北部駐留の米軍削減を通じてクルド人勢力と関係を薄める方針を示した点をトルコは評価できる。米議会では対トルコ強硬派が目立つが、トランプ氏は11月中旬にエルドアン氏をワシントンに招き関係改善を進める。

トルコの対ロ接近はNATOの共同防衛に暗い影を落とす。共同防衛の前提は敵国の脅威に対し加盟国間で共通認識を持つことだからだ。NATOのストルテンベルグ事務総長は23日の記者会見で、シリア北部でのロシアとトルコの合意について「評価するのは早計だ」と指摘した。シリア北部での戦闘を回避できる点は評価できるが、トルコとロシアの接近は快く思っていない節がある。

米国とトルコはNATOの結束を揺るがす。米国は軍事費の増額、トルコは難民の受け入れ拡大で、それぞれ欧州に「応分の負担」を強く求めている。ロシアは中距離核戦力(INF)ミサイルの配備も進め、欧州にとってロシアの脅威は高まるばかりだ。トルコのシリア侵攻をきっかけにしたNATO加盟国間の足並みの乱れは、ロシアが望むNATOの分断につながりかねない。

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