マイクロソフト、クラウド深化へ「3本の矢」

2019/10/24 14:18
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【ロングビーチ(カリフォルニア州)=佐藤浩実】米マイクロソフトの業績が好調だ。企業向けのクラウド事業がけん引し、2019年7~9月期の純利益は100億ドル(約1兆円)の大台に乗せた。ただ成長率は徐々に鈍っており、米アマゾン・ドット・コムなどとの競争も激しい。柱になったクラウドをもう一段伸ばすカギとなるのが「人工知能(AI)」「オープンソース」「ハード」の3本の矢だ。

7~9月期決算はクラウド事業がけん引した(マイクロソフトのナデラCEO)=ロイター

7~9月期決算はクラウド事業がけん引した(マイクロソフトのナデラCEO)=ロイター

「力強いスタートだ」。23日の決算会見でマイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は強調した。7~9月期は同社にとって第1四半期で、同期間として最高益になった。クラウド基盤などの「コマーシャルクラウド」が好調だった。

コマーシャルクラウドは、クラウド基盤「Azure(アジュール)」やネット経由で業務ソフトを使う「オフィス365」などをまとめたもので、7~9月期の売上高は116億ドルと前年同期比36%増えた。マイクロソフト全体(330億ドル)の35%を占め、29%だった1年前よりも存在感は増した。コマーシャルクラウドの粗利益率は7~9月期で66%にのぼり、マイクロソフトの業績を支えている。

とはいえ市場は好業績にも冷静だ。同社の時価総額は4月25日に一時1兆ドルを超えアップルを抜いて米市場でトップに立っていたが、10月18日に再びその座をアップルに譲った。23日の決算を受けてもアップルが首位を保ったままだ。

懸念材料は激しくなる競争環境だ。クラウド市場の成長は続いているものの、マイクロソフトがクラウド基盤で首位のアマゾンを追う構図は変わらない。クラウドシェアではマイクロソフトに劣るグーグルも昨年以降、営業人員を増やして顧客の開拓を急いでいる。

企業向けソフトのサービスもライバルがひしめいている。ビジネスチャットで競合する米スラック・テクノロジーズのスチュワート・バターフィールドCEOは「(得意なことに集中する)新興企業のほうが大手よりも顧客が本当に使いやすいものを作れる」と話す。

かつてパソコンの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で築いたような圧倒的な地位をいまのマイクロソフトが確立できているわけではない。次に向けた脱皮ができるかどうかを占うのが、クラウドと「AI」「オープンソース」「ハード」の連携だ。

ナデラCEOは23日の会見でAI開発の強化に触れ「(クラウドを使う)法人の開拓につながる」と強調した。会話の書き起こしや複雑な画像認識などのサービスはAIが不可欠だが、それを高度な演算で動かすのはクラウド。AIサービスを潤沢にし利用者が増えることはクラウドユーザーの増加に直結すると見ている。

オープンソース戦略を支えるのが昨年買収したソースコード共有サイトのギットハブだ。オープンソースを通じてつくったソフトウエアはいまやクラウド上で動かす高度ものも少なくない。ギットハブの取り込みは開発者を広く自社クラウドに呼び込む狙いもある。ナデラCEOは「買収時よりも30%多い、4千万人の開発者が使っている」と述べた。

ハードの活用は10月上旬に「サーフェス」のブランドでの再参入を発表したスマートフォンに狙いが透ける。20年に発売を予定する2画面スマホの紹介動画で出てきたのは、ビデオ会議などクラウドサービスの数々。7~9月期はサーフェス部門の売上高は前年割れだったが、今後のハードウエア事業は単なる機器売りではなくユーザーをクラウドサービスに橋渡しする役割を負う。

OSの会社からクラウド企業への転身に成功し、収益拡大のサイクルを確立させたナデラCEOの手腕は投資家や産業界から高く評価されている。会見で「成長余地のある巨大な市場には積極的に投資していく」と述べた同CEO。「復活」が定着した今、クラウド企業としてどう深化できるかが次の課題となる。

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