孫氏、ユニコーン戦略再考 マネー主導の拡大揺らぐ

2019/10/23 23:00
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世界のユニコーン企業の「成長神話」が揺らぎ始めた。経営難にあえぐ米シェアオフィス大手ウィーワーク運営のウィーカンパニーは、大株主のソフトバンクグループから巨額支援を受け入れると発表した。著名ユニコーンが再建支援を仰ぐのは初めてだ。投資マネー主導で収益より事業拡大を優先してきた新興企業の変調を象徴している。

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9月中旬、ソフトバンクグループは米カリフォルニア州で初めてのイベントを開いた。10兆円ファンド「ビジョン・ファンド」の出資先トップを一堂に集めた「最高経営責任者(CEO)サミット」だ。ファンドの投資先は80社超。世界各地から人工知能(AI)関連の有力スタートアップの創業者が来訪した。

「黒字は出していた方がいい」。米ブルームバーグによると、その場で、ソフトバンクGの孫正義会長兼社長はこう訴えた。

孫氏は「まずは市場シェア獲得に向けた事業拡大を優先する」という哲学で知られる。投資先の成長余地を高く評価し、10兆円ファンドの資金を積極的に投じて事業拡大を促してきた。その孫氏が投資先に対し収益化を訴え、投資先の主要企業であるウィーに巨額を支援する――。一連の流れは、ユニコーンを取り巻く環境の変化を示す。

近年、未公開株市場には投資マネーが注ぎ込まれてきた。その花形がユニコーンだった。従来の基準では上場するはずの企業を未公開株市場にとどめたうえ、大型投資を実行し、さらなる事業拡大へ向かわせる。こんな投資が増えた。

未公開株市場では、起業直後や初期への投資から、一定の規模になった成長後期への投資に比重がシフトした。後期での資金調達の規模は中央値で12年から4倍になった。起業直後の調達の2倍に比べ伸びが大きい。

未公開株市場の企業価値評価は、買い手と売り手の思惑が交錯する上場市場と異なり、基本的に「投資家(=買い手)」のみの目線で決まる。後期の企業でも、買い手側が成長を見込めば一段と価値が上がっていく。ソフトバンクGだけでなく、シンガポールの政府系投資ファンド、テマセク・ホールディングスなども運用資産のうち非上場株への投資比率を高め、マネー流入が拡大した。

ウィーの企業価値は、この循環のなかで高く評価されてきた。17年に169億ドルだった価値は資金調達を重ねた19年1月に470億ドルに膨らんだ。米メディアの報道によると、ソフトバンクGは今回、ウィーの価値を80億ドルと見積もった。

ソフトバンクGの投資には警鐘を鳴らす声があった。米投資会社大手、オークツリー・キャピタル・マネジメントのハワード・マークス共同会長は今夏、日本経済新聞の取材に対し「非常に前のめりで、とても気前の良いマネーの出し手。マーケットはリスクに慎重で、規律が働く場であるべきだ」と述べた。

現時点では「『ウィーワーク・ショック』は他のユニコーンには波及していない」(米ベンチャーキャピタル)との声も聞かれる。AIなどテクノロジーの進展が新興企業に商機をもたらすとの見方は揺らいでいない。

ただ、これまで拡大一途だったユニコーンの事業戦略は再考を迫られる可能性が高い。中国配車アプリ最大手「滴滴出行」は人員削減や非中核事業の縮小に踏み切った。マネーの出し手も慎重にならざるを得ない。成長か脱落か――。企業、投資家とも選別の波を受けそうだ。(堀田隆文、山下晃)

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