農・食支援、長い目で 武蔵野銀がマッチングに力

台風19号
2019/10/24 6:00
保存
共有
印刷
その他

武蔵野銀行が農業や食品分野の企業支援で強みを発揮し始めた。独自の取引網でビジネスマッチングを進め、異業種からの農業参入や地域産品の開発を後押しする。農業や食品は成果が出るまで時間のかかる難しい分野だが、花開けば持続的な成長が期待できる。地道な支援を通じ、市場拡大や地域振興、融資増などにつなげる考えだ。

小麦の6次産業化を後押しするプロジェクトにも取り組んでいる(さいたま市)

小麦の6次産業化を後押しするプロジェクトにも取り組んでいる(さいたま市)

千葉県との県境にある埼玉県松伏町。人口約3万人のこの地域で現在、約1500平方メートルのイチゴ観光農園の整備が進んでいる。事業を担うのは中堅ゼネコンの鉄建と同県八潮市の農業法人「しゅん・あぐり」が共同出資して4月に設立した「ファーム ティー・エス」(八潮市)。2020年1月開業予定で、町の新たな観光拠点として期待が高まる。

農業への参入を探っていた鉄建としゅん・あぐりを結んだのが、武蔵野銀行地域サポート部の「成長分野推進グループ」だ。担当する土屋仁志さん(37)は9年前から県内の農家を回り、独自のネットワークを築いてきた。生産者や農業関連企業の細かいニーズをくみ取り、資金調達にとどまらない幅広い助言の方法を磨いている。

過去の業績で融資の可否を判断しがちな銀行にとって、目先の収益を見込みにくい農業は開拓が難しい。だが同行は他の産業と結ぶことで成長の余地が生まれるとみて、08年に担当部署を創設。さいたま市内の緑地で小麦の生産や商品化を支援するプロジェクトを立ち上げるなど、融資以外の形で農業支援に力を入れてきた。

18年には世界的な評価を受けるベンチャーウイスキー(秩父市)に大麦の委託生産先を紹介。今年6月には、さいたま市の焼肉店経営会社と毛呂山町の酒造会社を引き合わせ、新たなマッコリの開発も支援した。生産者から卸売り、小売りなど流通の川上から川下まで広がった取引先に「ワンストップで対応できる」(土屋さん)のが強みとなる。

資金調達で提案が生きた事例もある。9月に武蔵ワイナリー(小川町)が始めた木おけを使って日本ワインを造る試みでは、ネットで小口資金を募るクラウドファンディング(CF)の手法を紹介。同行が近畿日本ツーリスト首都圏(東京・新宿)やCFサイトを運営する朝日新聞社と業務提携し、地域活性化につながるプロジェクトとして始動を後押しした。

国の統計によると、埼玉県の農業産出額(17年)は全国18位にとどまるが、花卉(かき、2位)や野菜(7位)など競争力の高い品目もある。大消費地の東京に近い地の利もあり、県内の製造品出荷額に占める食料品の割合は増加傾向。18年工業統計調査(17年実績)では、輸送用機器に次いで2番目に高くなった。

人口減少や低金利の長期化で金融機関の収益環境が悪化するなか、地域の成長産業をいかに育てるかは地方銀行に課された大きな課題だ。融資先の開拓を狙って他行も続々と農業支援に力を入れており、競争は厳しい。武蔵野銀は培ってきた取引網を地域活性化に生かす姿勢を強く打ち出すことで差別化を狙う。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]