厳冬パネル産業 液晶最大手LG系も赤字に、7~9月

アジアBiz
2019/10/23 22:30
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LGは巻き取れる有機ELテレビを開発したが、販売の先行きは不透明だ(ソウル市での展示会)

LGは巻き取れる有機ELテレビを開発したが、販売の先行きは不透明だ(ソウル市での展示会)

【ソウル=細川幸太郎】ディスプレー産業が厳冬期を迎えている。中国発の供給過剰で日韓台メーカーの液晶パネル事業は赤字に陥った。液晶最大手の韓国LGディスプレー(LGD)も2019年7~9月期に8年ぶりの営業赤字に転落した。「液晶の次」と期待される有機ELにも中国勢が迫る。日台勢に続きLGDも投資競争からふるい落とされる可能性が出てきた。

「会社の存続が危険にさらされている」。10月15日、LGDの全社員はこんなメールを受け取った。差出人は丁豪栄(チョン・ホヨン、57)社長。9月16日の社長就任後、初めての社員向けメッセージだった。

丁社長はLG電子の財務部門出身。08年から5年間はLGDで最高財務責任者(CFO)を務めた。LG化学の社長だった同氏がLGDに呼び戻されたのは、サムスン電子や中国勢との競争を生き抜くために財務戦略が欠かせないためだ。

メールから1週間後の23日。LGDが発表した19年7~9月期決算は売上高が前年同期比4.6%減の5兆8220億ウォン(約5380億円)、営業損益は4370億ウォンの赤字(前年同期は1400億ウォンの黒字)だった。主要顧客の米アップル向けのパネル供給が増える7~9月期としては8年ぶりの赤字転落だ。

赤字の主因は中国勢の増産に伴うテレビ向け液晶パネルの価格下落だ。足元のテレビ向け平均パネル価格は1年前から2~3割下落した。

調査会社IHSマークイットによると、19年はパネル需要が前年比5%増なのに対して供給量は10%増える見通し。業界では「過去最悪の供給過剰。誰も利益を確保できない」との声も出る。

中国では15年ごろから政府の支援を得た京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)などが各地に工場を建設した。国別の生産能力は4年程度で中国が日本や台湾、韓国を抜いた。近年は1工場あたり5千億円の巨額投資が必要とされる。スマホ用液晶パネルで世界最大手のジャパンディスプレイ(JDI)や、テレビ向け液晶パネル大手、台湾の友達光電(AUO)などは増産競争から脱落した。

踏みとどまるのがサムスン電子とLGDの2社だ。半導体事業だけで年間4兆円の営業利益(18年12月期)を稼ぎ、投資余力のあるサムスンは次世代の有機ELパネルに1兆円超を投じる。

一方のLGD。8月に有機ELの増産投資のために調達した金額は8千億ウォン(約740億円)規模にとどまった。23日の決算発表後の電話会見で徐東熙(ソ・ドンヒ)CFOは「設備投資は有機EL中心に減価償却の範囲内で管理する」と話した。キャッシュフローを見る限り、サムスンや中国勢と投資競争を続けられるかは不透明だ。

LGDはテレビとスマートフォンそれぞれに、液晶パネルと有機ELパネルをそろえ、製品展開してきた。全方位戦略の結果、研究開発や設備投資が分散し、苦境を招いた。韓国のアナリストは「国内の液晶工場を停止すべきだ」と警告する。

再起を期す有機ELも盤石ではない。スマホ向けの有機ELパネルはiPhoneの最新モデルに初めて採用されたが、採用枚数はサムスンの10分の1以下。自社向けも含めて年間5億枚を安定量産するサムスンに対抗できる戦略はみえない。

LGDが独占供給するテレビ向け有機ELパネルも厳しい。18年の有機ELテレビの世界市場は約250万台で、液晶テレビの2億台に比べるとまだ小さい。サムスンや中国勢が同分野でも量産投資を表明しており価格下落は必至だ。

LGDの株価は08年のリーマン危機後の安値を下回る。パネル価格と同様、株価も反転のきっかけをつかめずにいる。

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