山岳遭難 無線技術で救助 信越総合通信局など試験

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2019/10/24 6:00
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総務省・信越総合通信局が中心となって、山岳遭難者の発見・救助につなげる無線通信技術の実証試験が相次いでいる。次世代通信規格「5G」などの新技術や電波の有効利用を進め、遭難現場の情報を迅速に把握することを目指している。救助隊員の負担軽減にもつながる手法として期待される。

標高2600メートル超えの山岳地でドローンを飛ばし、5G利用で4K映像の送信試験を実施

標高2600メートル超えの山岳地でドローンを飛ばし、5G利用で4K映像の送信試験を実施

「今なら飛び立てる―」。中央アルプスの名所「千畳敷カール」(長野県駒ケ根市など)で16日朝、1台のドローンが空に舞い上がった。標高2612メートルの高地に立ちこめていた霧が晴れ、草紅葉を背景に試験が始まった。

同通信局が事業委託した「山岳登山者見守りシステム」の試験で、信州大学の研究者の提案をもとにKDDIや駒ケ根市など産官学が連携して実施した。ドローンに搭載しているのは高精細映像が撮影できる4Kカメラと、5G対応のタブレット端末。5G対応機器なら4K映像のデータ量でも送信できるようになる。

試験では遭難者に見立てた人に、低消費電力で広域通信が可能な次世代無線技術「LPWA」の発信器を持って山に入ってもらい、位置情報を送信した。登山道から外れたり長時間移動がなかったりすると異常と判断し、ドローンを飛ばしてカメラで撮影・送信する。

4K映像なら遭難かどうかはっきり視認できるというわけだ。当日は霧の中で映像ははっきりしなかったが、事前試験で撮影した映像では、山中から手を振る人の様子が見えた。

地元の山岳救助関係者からは、救助現場で連携して対応する経験を積むという運用面の課題も出たという。また5Gの基地局で山岳すべてをカバーすることは難しい面もある。担当した同通信局の電波利用企画課は「使い勝手などで課題が出ていた。できることから支援していきたい」と説明している。

登山者にはLPWAの発信器を持ってもらう必要があり、普及啓発活動も課題になりそうだ。

ドローンに搭載した4Kカメラで山岳遭難現場を撮影する

ドローンに搭載した4Kカメラで山岳遭難現場を撮影する

一方、同通信局は異なる無線技術で山岳遭難者などの早期発見に向けた試験も行った。アナログテレビ放送の終了で空いた一部の周波数帯(200メガヘルツ帯)を利用する「公共ブロードバンド移動通信システム(公共BB)」の新しい活用事例だ。

これまでは地上利用に限られていた。同通信局は上空利用の可能性を探る産官学の調査検討会を設置し、9日に同県白馬村で全国初の公開試験を実施した。

ドローンを中継に利用するシステムで、途中に山がそびえて電波が届きにくい地域間の長距離の画像送信が可能になる。信越地域では豪雪で孤立した中山間地の集落の状況把握など、防災面でも役立ちそうだ。

電波利用企画課は「積雪時でも通信が可能かどうか今後も試験を進め、2019年度末には報告書をまとめたい」と話している。一連の試験結果は電波利用の免許を出すうえで技術要件の基準づくりに役立てる方針だ。

山岳遭難事故は年々増加傾向にある。警察庁の調査では18年の遭難発生件数は過去最多で、都道府県別では長野県は全国で最も多い297件、新潟県もワースト上位の136件だった。通常の携帯電話や登山届だけでは救助活動に情報不足になりがちだけに、こうした無線技術への期待は膨らんでいる。(松本支局長 竹内雅人)

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