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シリア和平、ロシアが主導へ

【イスタンブール=木寺もも子、ワシントン=中村亮】隣国のシリア北部に軍事侵攻したトルコは22日のロシアとの首脳会談で、敵対するシリア側のクルド人武装勢力を国境付近から撤収させることで一致した。撤収後の国境沿いに「安全地帯」を設け、ロシアとトルコが共同でパトロールする。シリアのアサド政権の後ろ盾であるロシアは同地域での影響力を強め、当面のシリア和平を主導する見通しだ。

合意によると、ロシア軍は23日正午(日本時間同日午後6時)からシリアのアサド政権軍とともにシリア北部に入り、トルコがテロリストとみなす「シリア民主軍(SDF)」などのクルド人武装勢力を国境から30キロメートル離れたラインまで退かせる。撤収は150時間以内に完了させ、その後はロシアとトルコが国境から10キロメートルの範囲内で共同でパトロールする。

ロシア大統領府によるとプーチン大統領はトルコとの合意内容を22日に電話でアサド大統領に伝え、支持を得た。

トルコ軍の侵攻作戦の範囲はシリア北部テルアビヤドから北東部ラス・アルアインまでの東西約120キロメートル、国境からの幅32キロメートルと定めた。ロシアとアサド政権の両軍が23日から展開するのはトルコの作戦範囲の西側と東側の国境地帯だ。

一方、米国とトルコが合意した停戦は22日夜に期限を迎えた。トルコ政府によると、SDF側は期限前にトルコの作戦範囲から撤収したと米国を通じて明らかにした。

ロシアのラブロフ外相は22日の首脳会談後「トルコの軍事作戦は終了する」と語った。トルコが求めていたシリア側の国境沿いの安全地帯設置が実現するとみられるためだ。トルコ国防省は23日の声明で「現在の作戦範囲の外側で新たな作戦は必要ない」と表明した。

このままトルコがクルド人勢力への軍事作戦を終えれば、シリア内戦後を見据えた和平プロセス加速につながる。主導するのはロシアだ。

トランプ氏は9日にトルコ軍の侵攻が始まると米兵の安全を理由にシリア北部に駐留していた米兵1000人をイラクに退避させると決めた。5年間にわたって過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦で米軍に協力したクルド人勢力をあっさり見放した形だ。

米メディアによると、クルド人勢力の司令官は「米国は我々を見殺しにした」と米政府高官に怒りをぶつけた。米軍の撤退で、クルド人勢力はロシアを後ろ盾とするシリアのアサド政権に近づいた。シリア領内でロシアと協調しない勢力はISなど一部の過激派や反アサド民兵組織に限られそうだ。

ロシアを利した形となった米軍のシリアからの撤収には、中東への関与を弱めるトランプ米大統領の意向が映る。中東研究所のグネイ・ヨーディス氏はシリア政策で「トルコやロシアとの裏取引があると疑いたくなるくらい米国が一方的に譲歩した」と語る。シリアでのロシア伸長を許し、IS対策でもロシアやトルコへの依存を強める。米議会が警戒したシナリオが現実になってきた。

トランプ氏は米軍のシリア撤収について「私はこれを掲げて大統領に当選した」と繰り返し強調する。2020年の大統領選に向け公約実現が最優先だと認める発言だ。再選のためには同盟関係も破棄しかねない同氏の姿勢が明確になった。

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