筆止めず「感情のまま」表現 芸術家 大森慶宣さん
拓き人

2019/10/24 6:00
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「絵を通じて交流したい。コミュニケーションの手段なのです」と話す大森さん

「絵を通じて交流したい。コミュニケーションの手段なのです」と話す大森さん

「頭で考えるのではなく、自分の心をありのままに表現する」。金沢市を拠点に活動する芸術家の大森慶宣(27)の制作活動にはこういう思いが詰まっている。金沢大学在学中に本格的に芸術の世界に目覚め、米国に留学して絵画などを学んだ。そこで得たのは技術だけでなく、好きなことで生きるという人生観。思いのままに筆を一気に走らせる「一筆描き」が人々の心をつかんでいる。

9月中旬、金沢21世紀美術館の一角。大森は展示されている自分の絵画に囲まれて、1人の女性の似顔絵を描いていた。女性の緊張を解きほぐすように笑顔で話しかけながら、決して筆を紙から離さず一筆で。わずか2~3分で一つの作品を作り上げた。

金沢市内にアトリエを持ち、年に2~3回、同市で個展を開く。訪れるのは、地元金沢だけでなく、SNS(交流サイト)で大森の作品に魅了された東京や大阪のファンたちだ。

今年2月に開いた個展の名称は「Life Nature―ありのままに―」。油絵のほか、1本の針金で作った猫、ススキで描いた人の顔など展示作品は様々。「市販のペンだと出せる線が限られる。ワクワクする好奇心を大切にしたい」。

作品はその時々の自分の心や感情を表現する手段だ。それを象徴する大森の特徴的な技法の一つが「一筆描き」。大森は「1度筆を離してしまうと『次どこから描こうかな』と頭で考えてしまう。心のままに迷いのない伸びやかな線を表現したい」と話す。

能登半島の先端、能登町で生まれた。小学校から高校まで同じ能登半島の穴水町で過ごした。「特にきっかけはなかった。もの心ついた時から絵を描いていた」という。

転機は大学生の頃。金沢大では英語教育を専攻したが、大学の芸術の授業で彫刻に魅せられた。「本格的に芸術を学びたかったら、米国で彫刻以外も勉強したほうがいい」。その授業の教員の一言で、2015年、大学4年生の時に米国に渡り絵画などの勉強をした。

学びながら感じたのは「米国では皆が互いの個性を認め合い、自分の好きなことをやっている」ということ。それから絵で自分の感情や心をありのままに表現することをテーマとし、絵で生きていくことを決めた。

展示会では、来訪者と一緒に絵を見て回る。自分の心を表現した絵を見て、受け手はどう感じるのかに興味がある。「絵を通じて人と交流したい。絵はコミュニケーションの手段です」。これからの目標は特に決めていない。「目標を決めてしまうと、自分の想像の範囲内でしか生きられないでしょ」。目の前の「やりたいこと」に全力で取り組んでいく。=敬称略

(毛芝雄己)

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