里見女流王座VS西山女王 女流王座戦五番勝負30日開幕
クイーン王座か、初の二冠か 実力者同士の頂上決戦

囲碁・将棋
2019/10/26 2:00
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里見香奈女流王座(27)に西山朋佳女王(24)が挑戦する将棋の第9期リコー杯女流王座戦(特別協力・日本経済新聞社)五番勝負が30日開幕する。2人は女性初の「棋士」を目指し奨励会三段リーグでもしのぎを削った仲で、女流王将戦でも三番勝負の真っ最中。女流全7タイトルのうち6つを持つ里見女流王座は4連覇と、通算5期で「クイーン王座」の資格獲得がかかる。残るタイトルを有する西山女王は初の二冠を狙う。女流棋界の頂上決戦が幕を開ける。

■里見香奈女流王座、クイーン王座狙う 目前の一局に集中する

さとみ・かな 1992年生まれ。島根県出雲市出身。森けい二九段門下。2004年女流プロデビュー。11年奨励会1級、13年三段、18年退会。女流タイトル37期。現在は清麗、女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花を併せ持つ女流六冠。女流五段。

さとみ・かな 1992年生まれ。島根県出雲市出身。森けい二九段門下。2004年女流プロデビュー。11年奨励会1級、13年三段、18年退会。女流タイトル37期。現在は清麗、女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花を併せ持つ女流六冠。女流五段。

同じ振り飛車党の西山さんですが、自分とはタイプが違い、どこにでも飛車を振り、力戦調の見慣れない形も好んで指す。以前は序中盤で時間を使わず、終盤力で勝負のような将棋でしたが、最近は序中盤でも一手一手時間を使うようになり、安定感を増した。トーナメントを危なげなく勝ち上がった印象があります。

大変な強敵であることは間違いないですが、相手がどうこうよりも自分のコンディションを整え、一局一局力を出し切りたい。

今の自分の調子は良くも悪くもない。一般棋戦での男性棋士との対局では、思わぬ好結果に自分でも驚くことがある一方で、反省点も多いが、得意の形でのびのび指せているし、負けても糧になっている実感はある。時間の余裕のない奨励会の時とは違って、将棋に、より集中できていると思う。研究会への参加は少し減ったが、将棋連盟の棋士室に行ったり、少し前の人工知能(AI)なども使いながら自分のペースでの勉強はできている。リラックスした状態で体調もいい。

五番勝負では、勝ち負けとは違ってドキドキ感を味わってみたい。その時の気分次第だが、戦型選択も含めて、今まで指してこなかった形も指してみたいし、そこで自分の力を試してみたい。クイーン王座もかかりますが、意識せず純粋に楽しみたいと思います。

進行中の女流王将戦での反省も踏まえながら、目の前の一局に集中することだけを考えています。

■西山朋佳女王、初の二冠を目指す いつも通り頑張るのみ

にしやま・ともか 1995年生まれ。大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。2010年奨励会入会(6級)、15年三段。女流タイトル2期。14年女流王座戦で女流タイトル初挑戦。18年初タイトルの女王を獲得。慶応大在学中(休学中)。

にしやま・ともか 1995年生まれ。大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。2010年奨励会入会(6級)、15年三段。女流タイトル2期。14年女流王座戦で女流タイトル初挑戦。18年初タイトルの女王を獲得。慶応大在学中(休学中)。

印象に残っているのは2回戦の妹弟子(藤井奈々女流1級)との一戦です。2学年下の彼女とは師匠(伊藤博文七段)の教室で一緒に学びましたが、公式戦は初手合い。私も初戦から強敵(清水市代女流六段)で、対戦が決まってからは楽しみにしていました。

小学生の頃からの付き合いですが、本当に強くなったなあと。付き合いが長い分、私の指し手を信じ過ぎてしまったみたいですが。準決勝・決勝も悔いのない内容の将棋が指せました。

前期の三段リーグは7勝11敗。内容は上がっていて勝機はあると思いますが、今期でリーグ8期目。危機感はあります。最近は勉強法を変えました。変えることを強いられたというか。みな中終盤が強く、序盤で悪くすると厳しい。研究会を増やしたり、振り飛車党の将棋AIも活用したり。

最近の里見さんは開放的に将棋を指している印象です。自分が指したい手を優先して、それが結果につながっている。対戦成績はほぼ五分だが、内容的には負けの将棋が多い。自分も成長しているとは思うが、全体的な完成度では劣る。ただ対戦が増えて傾向はつかめてきた。女流王将戦とのダブルタイトル戦ですし、長い期間、里見さんのことを考える秋になります。

里見さんの実績や最近の成績を見ると圧倒されますが、盤の前に座れば苦しい思いもして頑張って将棋を指すのはいつもと同じ。特別なことは考えず、いつも通り頑張ります。

■展望を聞く 里見、積極性で好調 西山、大舞台に慣れ

五番勝負の展望を山崎隆之八段(38)と谷口由紀女流二段(26)に聞いた。

――西山が挑戦者に名乗りを上げた。

谷口 西山は生家が近所で学年は3つ下。小学生の頃から同じ将棋教室に通い、大阪の将棋会館にもよく一緒に行っていた。当時から早見えで切れ味の鋭い将棋を指していて、同じスタイルのまま成長し、女流棋戦でもようやく活躍し始めた。今期トーナメントで倒した相手もすごいが、驚くべきはその内容で、全く危なげなかった。

山崎 奨励会二段当時に幹事だったが、才能は精鋭といわれる男性棋士と比べても遜色なかった。序盤の勉強は十分でなかったが、終盤力だけでよく勝っていた。女流棋戦でも、序盤に悪くして終盤、腕力で逆転する将棋が多かったが、最近は序盤から時間を使いながらリードしそのまま押し切っている。女流タイトルへの欲も出てきたようだ。

――里見の調子は。

山崎隆之八段

山崎隆之八段

山崎 プロの男性棋士との戦績は勝ったり負けたりだが、内容がいい。積極性が増しているのは、きつい相手に自分からぶつかっていくからだろう。奨励会三段の頃に比べて、力強く、充実度が増しており、プロ的にも面白い将棋が多い。

もともと豊島(将之名人)や永瀬(拓矢王座)らと同様、努力で着実に成長するタイプ。まだ20代で、努力を怠る人でもない。さらなる成長が期待できる。

谷口 奨励会を退会したあたりから印象が変わった。前は「話しかけないで」という雰囲気を漂わせていたが、今は自分から話しかけるしよく笑う。同じ女流棋士として感心してばかりもいられないが、もともとスキのない将棋に積極性が加わった感じがする。

――どんな将棋になるか。

山崎 振り飛車党同士だから相振り飛車もあるが、里見が居飛車に構えて対抗型にするのではないか。里見は関西の有力棋士の研究会に参加し、その居飛車党を相手に対抗型の研究をしていると思われるからだ。

ともに攻め将棋だが、西山がスピード感と切れ味の鋭さが売り物なのに対し、里見は全身全霊で一気に襲いかかる。どちらが持ち味を発揮できるかだ。

谷口由紀女流二段

谷口由紀女流二段

谷口 間違いなく飛車を振る西山に対し、里見がどう対応するか。対抗型もありそうだが基本は相振り飛車だと思う。一発パンチが入りやすく、こわい戦型でもあるが、この二人は経験値が高く、避けないだろう。里見は相手の得意型で戦うのが好きで、西山がずっと得意にしている三間飛車に組ませるのではないか。

個人的には里見が時折見せる金無双の変形のような構えに関心がある。里見独自の構えのようで、かなり優秀だ。この構えに西山がどう挑むか見てみたい。

――勝敗予想を。

山崎 女流棋界の天下をかけた注目の戦い。一方的にはならないだろう。

西山は序盤の不安がなくなっているのが強みだが、トーナメントでは大差の勝ちばかりで際どい接戦を経験していないのが不安材料。最近の里見は勝ち負けより将棋を大いに楽しんでいる感じがあって、調子も上向いている。大一番を楽しめる度合いの差で、里見が3勝2敗で防衛とみる。

谷口 西山は緊張しやすい性格だったが、女流棋戦の大舞台にも慣れてきた。今春、マイナビ女子オープンで里見の挑戦を退けたのが大いに自信につながったはず。勢いでは西山に分がある。もつれると本領を発揮する里見が相手なので、奪取できるとすれば3勝1敗。初戦が大事な戦いになる。=文中敬称略

◇ ◇ ◇

■伊藤、決定戦で再び涙

やはり「奨励会組」は強かった。ベスト4は現三段の西山女王に、元初段の加藤女流三段、元1級の伊藤女流三段に岩根女流三段と、全員が奨励会経験者。近年の女流棋界を象徴するようなトーナメントとなった。

中でも最近の充実ぶりが際立つのが伊藤女流三段だ。今回の女流王座戦も昨年に続いて挑戦者決定戦で敗れ涙をのんだが、今年度ここまでの勝率は8割をゆうに超え、勝率・勝数・対局数・連勝数の女流記録4冠。6度の挑戦失敗など初タイトルまであと一歩という状況が続いており、飛躍を期待するファンの声も高まっている。

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