ブラジル、年金改革法が成立 受給年齢引き上げ

中南米
2019/10/23 11:28
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年金改革法案の可決を喜ぶゲジス経済相(中央上)ら(22日、ブラジリア)=ロイター

年金改革法案の可決を喜ぶゲジス経済相(中央上)ら(22日、ブラジリア)=ロイター

【ブエノスアイレス=外山尚之】ブラジルで22日、年金支給年齢の引き上げを柱とする年金改革法案が成立した。過度に手厚い年金給付は財政赤字の主要因となっており、インフラ投資などに資金が回らず、経済の長期停滞を招いていた。1月に発足したボルソナロ政権にとっては経済立て直しへ最大の関門を乗り越えた形だが、長年の左派政権下で放置された非効率な仕組みや複雑な税制など課題は多く、市場や経済界はさらなる改革を求める。

連邦議会上院で年金改革法案を可決した。23日の法案の文言の修正審議を経て、近く公布される見通し。訪日中のボルソナロ大統領はツイッターに「この勝利は我々の国を良い方向へ飛び立たせるための道を開く」と投稿した。

ブラジルの年金制度は50歳代から受給できるうえ、給付水準も高く、世界的に見ても手厚い。経済協力開発機構(OECD)によると、ブラジルの現役世代の平均的な手取りに対する年金額の比率は2014年時点で約76%と、OECD加盟国平均の63%を上回る。

今後、支給開始年齢を原則女性で62歳、男性で65歳に段階的に引き上げる。満額受給のための積立期間も設定し、就労期間を延ばす。

新興国のブラジルだが、足元では急速に少子高齢化が進む。女性の高学歴化に託児所など社会インフラの未整備が重なり、合計特殊出生率は1.7と、既に先進国並みの低水準だ。右肩上がりで増える年金支出を保険料では賄えず、税金で補填する状況が続いていた。

18年の年金財政は2900億レアル(約7兆7千億円)の赤字で、赤字額は10年前の3.7倍に拡大した。年金など社会保障費が国内総生産(GDP)に占める比率は13%に達し、20カ国・地域(G20)平均の8%を大幅に上回るとの試算もある。過剰な年金給付が基礎的財政収支の赤字の最大の要因になっており、インフラや教育分野への投資が後回しとなっていた。

今回の法案により、今後10年間で計8千億レアルの歳出削減効果が見込めるという。議会の抵抗もあり、ボルソナロ政権の当初改革案が目指していた1兆2000億レアルには届かなかった。それでもブラジルの民間シンクタンク、ジェトゥリオ・バルガス財団のマウロ・ホシリン教授は「歳出削減額は当初の期待よりも低かったが、重要な前進だ」と評価する。

政府の経済政策を統括するゲジス経済相は年金改革法案の成立を受け「結果に満足している」と述べた後、「我々は次の改革の途上にある」として、さらなる改革が必要だとの見解を示した。

ブラジルでは16年まで大衆迎合的な政策を掲げる左派政権が続いたため、新興国の中でも経済政策の遅れが目立つ。スイスの国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキングでは全63カ国中、59位に沈む。

ゲジス氏が狙いを定めるのが、企業を悩ませる複雑な税制だ。ブラジルでは連邦政府や州、市などそれぞれが企業や物品に課税するため、諸外国に比べて製造・流通コストが割高になっている。国際通貨基金(IMF)が生産性向上のために税制の簡素化が必要だと指摘するほか、自動車業界団体などが税制の抜本的な見直しを求めている。

ホシリン教授は「企業への減税の穴埋めとして所得に対する税金の引き上げが必要で、所得税や配当への課税、相続税の引き上げなどが考えられる」と指摘する。しかし、こうした改革は地方自治体の協力が必要な上、抵抗も大きい。地元メディアは政府は税制改革を来年以降に後回しし、当面は公務員の給与引き下げなど行政改革に着手すると報じている。

ブラジルの主要株価指数のボベスパは過去最高値を更新するが、通貨レアルは1ドル=4.08レアルと、年初から約5%低い水準にある。市場は財政赤字の止血を歓迎しつつも、成長のためのさらなる改革を催促している。

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