今日も走ろう(鏑木毅)

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「国」でチームをつくるとは 文化の違い超え目標へ

2019/10/24 3:00
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ラグビーのワールドカップ(W杯)で日本代表チームの快進撃に勇気づけられている。

最初のうちは外国籍の選手が多く出場するラグビー独特のルールと、海外出身者も多いチーム構成に少々、違和感を抱いた。だが試合が進むにつれ国籍にかかわらず切磋琢磨(せっさたくま)し、心を一つにして勝利を目指す姿に深く心を打たれた。

いったい、スポーツにおける「国」とは何だろうか。8年ほど前、香港で行われる100キロメートルのトレイルランニングレースに出場した。4人1組でチームを構成し1000チーム4000人が参加する香港の一大スポーツイベントだ。

私はアメリカ人、オーストラリア人、中国人からなる多国籍チームの一員となった。全員の協賛企業が同じという共通点はあるもののほぼ初対面。それでも事前に何度か合宿すると打ち解けるようになり、レース中も疲れた選手をフォローしながら2位でフィニッシュすることができた。ゴールでは感極まり、みんなで抱き合い涙した。

国籍が異なる者同士で2位完走し、感動の涙(2011年、香港でのレース)

国籍が異なる者同士で2位完走し、感動の涙(2011年、香港でのレース)

感動の源となったのは、言葉や文化、育った環境も考え方も違うというハンディがあっても一つの目標をなし遂げたという満足感だった。いやむしろハンディではなく互いに「国の違いを乗り越えよう」という気持ちになることで、それぞれの潜在能力を発揮できたように思えた。日本人だけのチームで走っていたら決して得られない成果だったと思う。

ところでラグビーの柔軟な国籍要件は発祥の英国の植民地政策の流れが背景にあるらしい。とはいえ海外出身のラグビー日本代表の選手たちは、選手として日本に滞在するうちに親身になってくれた日本人の優しさに触れ、愛着を感じ、日本代表としてプレーすることに誇りを持つようになったという。一度ある国の代表を選ぶと、二度と母国の代表にはなれないルールがあることを鑑みれば、その決断には大きな覚悟が必要となるのは言うまでもない。

国際化が進み、多くの人が国境を越えてボーダーレスに移動する現代。自動的に「生まれた国で」というのではなく「この国を選びたい」という積極的理由が国の代表になる理想の形となっていくだろうか。ラグビー日本代表のリーチ・マイケル主将はニュージーランド出身。彼の活躍により彼の母国にも親近感や愛情を感じるのは私だけではないはず。試合終了のノーサイドで勝敗を超えたすがすがしさを感じるのはこのあたりにも理由がありそうだ。

日本の世の中をあらためて見回せば、近年は外国人労働者も国内で極めて身近になり、国際化も急だ。これまでどちらかといえば島国的な独善的な思考に陥りがちだったかもしれないけれど、これを改めて、社会のあちこちに柔軟でしなやかな「チーム日本」をつくっていく時が来たといえるのかもしれない。スポーツは社会を映す鏡とも呼ばれる。アジアで初めて開催されたラグビーW杯日本大会の成功が、そのような議論のきっかけになるだろうか。ナショナリズムの発露の応酬となりがちなオリンピックとは異なる風景をいましっかりと目に焼き付けておきたい。

(プロトレイルランナー)

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