十数年ぶりの続編ヒット相次ぐ、十二国記など 動画で沸く

消費を斬る
日経MJ
コラム(ビジネス)
2019/10/22 2:00
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出版やテレビ業界で十数年のブランクを経て刊行・放送された人気シリーズの新作が相次ぎヒットしている。変わらぬ世界観が当時のファンを沸かせるほか、空白期間に動画配信サービスなどを経由し、新たな読者・視聴者の開拓が進んだ。ネットの普及で流通するコンテンツ量が増える中、堅実なヒットが見込める名作へのメディアの依存度は今後高まりそうだ。

「中学生の頃から新作を待ち続けた」。東京都千代田区に住む女性会社員(31)は13日、小野不由美さんの小説「十二国記」シリーズの新作「白銀(しろがね)の墟(おか) 玄(くろ)の月」を手に取り、ワクワクした様子でこう話した。

12日発売の「十二国記」シリーズの新作「白銀の墟 玄の月」の第1・第2巻

12日発売の「十二国記」シリーズの新作「白銀の墟 玄の月」の第1・第2巻

十二国記は異世界「十二国」を主な舞台に、それぞれの国の市民、王、官吏などの姿を描いたファンタジーとミステリーが融合したような作品だ。これまで本編の長編作品は7作発表されたが、新作は18年ぶりとなる。12日に2巻が同時刊行され、さらに11月にもう2巻が出版される。

十二国記は一般的な認知度こそ高くないが、熱狂的なファンを抱えている。出版元の新潮社によると第1巻の初版は50万部と「村上春樹さんレベル」(宣伝担当者)で、15日には早くも各10万部の増刷を決めた。

テレビドラマでも10月、待望の新作が相次いだ。テレビ朝日系で放送が始まった「時効警察はじめました」はオダギリジョーさん主演の人気コメディーミステリーの、連続ドラマとしては12年ぶりの新作だ。フジテレビ系の「まだ結婚できない男」は06年放映の名作コメディーの続編。いずれも視聴率は好調だ。

ジャンルは違えど、3つの十数年ぶりの新作が人気を集める共通の理由はいくつかある。1つは緻密に構成された世界観だ。例えば十二国記はファンタジーだが「史実に基づくかのような世界観が広がっている」(新潮社の宣伝担当者)。

もともと十二国記は10~20代の女性をターゲットにした小説だったが「大人の読者にも刺さるクオリティー」(同)。十数年前の読者が年を経てもファンとして残り男性など読者層も広がった。

サブスクリプション(定額制)型動画配信サービスの普及もヒットを後押しする。2つのドラマはもちろん、十二国記もNHKで02~03年放映の同作を原作としたアニメが動画サービスで配信。「アニメでファンになった人も多いだろう」(新潮社担当者)

動画配信サービスの台頭で、昔からのファンは新作に向け「予習」できる。繰り返し視聴でき、作品への熱量も高まりやすい。新たなファンの獲得にも貢献した。十数年のブランクはマイナスではなく、むしろプラスに働く。

ネットの普及でコンテンツの流通量は爆発的に増えた。次世代通信規格「5G」の普及が進めば、消費者の余暇を埋める選択肢はより多様化する。そんななかで出版やテレビといった旧来型のメディアが根強い人気を誇る往年の名作を頼る動きは今後強まりそうだ。(高尾泰朗)

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