「変わり種甘酒」8種飲み比べ 透明タイプや抹茶味も

甘酒は「酒」と名がつくものの、アルコールはほとんど含まない日本の伝統的な甘味飲料です。スーパーやコンビニなどで手軽に手に入る「おやつ」として親しまれてきました。2016年ごろからは甘酒の栄養面がフィーチャーされ、ビタミンやアミノ酸などを豊富に含むことから「飲む点滴」として知られるようになり、ブームが巻き起こりました。その後も女性を中心に幅広く飲まれています。
コメ麹(こうじ)を主体としたシンプルな原料だからこそ、新しい飲み方の提案として各社さまざまな甘酒商品を発売しています。そこで、今回は主要メーカーおよび19年に発売された新商品の中から、スタンダードな甘酒とはひと味異なる「変わり種」甘酒8種を飲み比べ。「すっきりタイプ」「フレーバータイプ」「機能性成分配合」の3つのカテゴリーに分けて紹介します。
酒粕(さけかす)が苦手な人にお薦め! ゴクゴク飲めるすっきりタイプ

甘酒といえば、とろみが特徴的な酒粕甘酒とすっきりとしたコメ麹甘酒の大きく2種類に分けられます。酒粕独特の香りやとろみが苦手という人には、後者の甘酒がお薦めです。すっきりと飲みやすいコメ麹甘酒2商品を飲み比べてみました。
八海山「麹だけでつくったすっきりあまさけ」118グラム(税別190円) 新潟の老舗酒蔵として知られる八海山のヒット商品「麹だけでつくったあまさけ」から糖質を30%カットし、甘みを抑えてよりすっきりした味わいを実現した商品です。白濁した見た目は濃厚な味を連想させますが、飲んでみると意外なほどスルスルと飲め、甘さもしつこくありません。 麹の香りも穏やかで、舌や口の中がベタベタする感覚もなく、商品名の通りすっきりとしたおいしさを最後まで楽しめます。飲みやすさはもちろん、コンパクトで思わず手に取りたくなるようなデザインの容器も女性の嗜好をしっかり押さえていると感じました。 「新潟魚沼の地で酒を造り続ける弊社の伝統が培った発酵技術でコントロールした麹を使い、すっきりと上品な味わいに仕上げました。『すっきりして飲みやすい』『一度飲むとほかに変えられない』というお声をいただくことが多いです」と話すのは、八海山広報担当の浜崎こずえさん。これからの季節は温めて飲むのもお薦めとのこと。
甘み ★★★☆☆
香り ★★★☆☆
飲みやすさ ★★★★★
ハナマルキ「透きとおった甘酒」125ミリリットル(オープン価格)
19年4月、味噌や塩麹など発酵食品でさまざまなヒット商品を生み出してきたハナマルキから、コメとコメ麹だけを使った甘酒が登場しました。見た目はみりんを思わせるような透明な薄茶色の液体で、とても甘酒には見えませんが、香りは甘酒らしい麹の香りです。
一口飲んでみると、見た目通り透明感のある味わいに驚き。とろみやクセがまったくなく、後味でほのかに麹らしき甘さを感じる程度。これまで飲んだ甘酒とも、またほかの飲み物とも違う新しい飲み物のように感じました。パッケージ写真のように氷を入れて飲むとさらに飲みやすく、大人から子どもまで飲む人を選ばない商品だと感じました。
「コメ麹甘酒を丁寧にろ過することで、甘酒の透明化に成功しました。『健康のために甘酒は飲んでみたいが、特有の粒や香りが苦手』という方にも幅広くお試しいただきたいと考えています」とハナマルキ広報宣伝室の杉山麻衣子さん。同社は12年から塩麹を透明な液体にした「液体塩こうじ」を発売しており、とろみのある麹を透明化する技術が甘酒にもうまく転用されているようです。紅茶や赤ワインなど、ほかのドリンクやアルコールと割って飲むのもお薦めとのこと。
甘み ★★☆☆☆
香り ★★★☆☆
飲みやすさ ★★★★★

抹茶、豆乳、しょうが 楽しく選べるフレーバータイプ
スタンダードな甘酒にほかの食材をブレンドし、味にバリエーションも持たせたフレーバータイプも人気。別の味が加わることで飲みやすくなりますし、毎日同じ味は飽きてしまうという人もいろいろな味を楽しめます。これがフレーバータイプの魅力です。
マルコメ「プラス糀(こうじ) 糀甘酒 抹茶ブレンド」125ミリリットル(参考価格160円・税込み)、「同 豆乳ブレンド」125ミリリットル(参考価格150円・税込み)
14年から販売を開始したマルコメの「プラス糀 糀甘酒」シリーズ。コメとコメ麹を使用したすっきりタイプの人気商品ですが、甘酒とよく合うフレーバーをプラスしたブレンド商品が多いのもこのシリーズの特徴です。今回は、19年9月に発売された「抹茶ブレンド」と、人気の「豆乳ブレンド」を試飲してみました。この2商品は特に女性から人気が高いとか。
まずは新商品の抹茶ブレンドから。原料にはコメやコメ麹のほかに、宇治抹茶や牛乳などをブレンド。濃い緑色をしており、香りも抹茶と牛乳の主張が強く、麹の香りはほとんど分かりません。飲んでみると、最初に抹茶のほろ苦い味がダイレクトに伝わり、飲み終わりは牛乳のまろやかな味わいとなっています。後味にわずかな麹の風味が感じられますが、一言で言えばほぼ「抹茶ミルク」。麹の風味が苦手な人や、抹茶好きな人なら特にお薦めです。
マルコメマーケティング部広報宣伝課の其田譲治さんによると、「抹茶は甘酒と同じくヘルシーなイメージがある一方で、その苦みから抹茶ドリンクの多くは加糖されています。そこで、砂糖を使わずに自然な甘みの甘酒とブレンドし、商品化しました」とのこと。抹茶の中でも渋み・苦み・爽やかさのある宇治抹茶を選定し、牛乳と合わせてコクとうま味のある仕上がりになったといいます。
甘み ★★★★☆
香り ★★★★☆
飲みやすさ ★★★☆☆
続いては「プラス糀 糀甘酒 豆乳ブレンド」。こちらは抹茶ブレンドと比べると麹の香りがしっかりと感じられます。一口飲んでみると「甘酒の豆乳割り」という印象。甘酒と豆乳がどちらも主張しすぎることなく、バランスよくブレンドされています。加糖されていないのでそれぞれの素材本来の素朴な甘さが感じられ、寒い日に温めて飲めばほっと落ち着きそうな癒やされる味わいです。
「もともと甘酒の割材として豆乳を使用している消費者が多かったことが開発のきっかけ。弊社では最も売れているプレーンタイプに次いでこれが売れています」(其田さん)とのこと。消費者からは「甘酒は苦手だけど豆乳ブレンドならおいしく飲める」と好評の声が届いているそうです。
甘み ★★★☆☆
香り ★★★☆☆
飲みやすさ ★★★★★
森永製菓「甘酒<しょうが>」190グラム (税別115円)
62年に甘酒を瓶で発売して以降、長年人気を博している森永製菓の甘酒。86年に缶商品に加わったロングセラーのショウガ味を試飲してみました。酒粕やコメ麹の香りの中に、かすかにショウガの香りがします。
飲んでみると、飲み口はやさしい風味の甘酒で、ピリッとしたショウガの後味がわずかに感じられました。下の方に残った酒粕の粒をかむと、さらにショウガの味がアップ。常温で試飲しましたが、飲み終わってしばらくすると、手のひらなど体が少し温まっているのを感じました。
「ショウガパウダーを配合しているため、キンと冷やせばさっぱりと、温めて飲めば体の芯からポカポカと温まります」と話すのは、同社食品マーケティング部の渡部耕平さん。製菓企業の商品なので、飲む前は「甘すぎるのでは?」と思っていましたが、実際は大人もおいしく飲める味わいでした。
甘み ★★★★☆
香り ★★★★☆
飲みやすさ ★★★☆☆

健康意識の高まりを受けて「甘酒+美容健康成分」がトレンド
19年に入ってから、機能性表示食品として認められた甘酒や、美容・健康をより意識した甘酒商品が続々と登場しています。甘酒はもともと栄養豊富で体に良いということから人気に火がつきましたが、こうした付加価値のある商品の登場でブームの再燃もあるかも。
養命酒製造「甘酒」125ミリリットル(税別139円)
「薬用養命酒」で知られる養命酒製造からも甘酒が販売されています。19年3月に甘酒商品としては日本で初めての機能性表示商品として発売。同社マーケティング部商品開発グループの松村知美さんによると「パイナップル由来グルコシルセラミドを関与成分として『肌が乾燥しがちな方に』という表示の許可を得た」とのこと。
飲んでみると、ひと口目はやや麹の風味を強めに感じましたが、飲み終わりはスッと消えていくような軽やかさで、甘ったるさがないのは好印象。わずかに含まれている食塩が、キレの良い後味を実現させているように感じました。
「甘酒の美容・健康価値の認知度が高まったことから、"ナチュラルにきれいになりたい"というニーズのある30~40代女性をメインターゲットにしました」と松村さん。同社ではもち米と麹からみりんを製造しており、コメと麹から作る甘酒にこれまでの知見が生かせたことも開発要因の一つ。満足のいく商品開発のために5年を要したといい、400年以上の歴史を持つ養命酒製造ならではのプライドが詰まった一品です。
甘み ★★★★☆
香り ★★★☆☆
飲みやすさ ★★★★☆
八海山「乳酸発酵の麹あまさけGABA(ギャバ)」118グラム(税別210円)
同社の「麹だけでつくったあまさけ」を乳酸発酵させ、GABAを配合(1本118グラム当たり100ミリグラム)した甘酒。19年8月発売。香りは一般的な甘酒と同様に麹の香りです。見た目やすっきりした口当たりは先ほどの「すっきりあまさけ」と近いように感じますが、こちらはヨーグルトのような爽やかな味わいで驚きます。
同社広報担当の浜崎こずえさんによると「乳酸菌は新潟県内から発見された植物性乳酸菌を使用。乳製品を使用していないので、乳アレルギーの方にも安心してお飲みいただけます。リラックスしたい方のために開発しました」とのこと。乳酸菌による穏やかな酸味がメインで、麹の風味は控えめな印象なので、麹の味や香りが苦手な人、普段ヨーグルト飲料を飲み慣れている人にお薦めしたい味です。
甘み ★★★☆☆
香り ★★★☆☆
飲みやすさ ★★★★☆
森永製菓「森永のやさしい米麹甘酒コラーゲン」125ミリリットル (税別130円)
コメ麹と食塩に、豚コラーゲンペプチド1000ミリグラムを配合した甘酒です。19年8月発売。やさしい麹の香りがします。液体は白濁していますが、飲んでみると舌ざわりはサラッと、後味はとてもさっぱり。砂糖不使用のためしつこい甘さもありません。
サプリメントなどに使用される一般的なコラーゲンは独特の風味があるものが多いため、飲みづらさがあるかもしれないと思いつつ飲んでみましたが、嫌な香りや味は一切なく、最後までおいしく飲むことができました。
「健康美容を目的に飲用されているお客様(特に30~40代女性)が期待することの上位に『美肌』があったため、コラーゲン入りのコメ麹甘酒を開発しました」(森永製菓食品マーケティング部渡部耕平さん)とのこと。
甘み ★★★☆☆
香り ★★★☆☆
飲みやすさ ★★★★☆
甘酒ブームによって生活習慣として甘酒が定着したことで、各社が趣向を凝らして新しいタイプの商品を続々と開発しています。今回紹介した甘酒なら、甘酒に苦手意識がある人も、普通の甘酒はもう飲み飽きたという人も、新しい感覚で楽しめるかもしれません。冷やして飲むのはもちろん、これからの寒い季節は温めて、変わり種甘酒を味わってみてはいかがでしょうか。
(フードライター 古滝直実)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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