チリで学生デモ暴徒化、非常事態宣言 地下鉄値上げで

【サンパウロ=外山尚之】南米チリで公共交通機関の運賃引き上げに反対する学生らのデモが暴徒化し、混乱が拡大している。ピニェラ大統領は18日に首都サンティアゴ一帯に非常事態宣言を発令し、19日には値上げ撤回を表明した。放火によりイタリアのエネルグループの子会社が入居するビルが燃やされるなど、余波が広がっている。
暴動のきっかけは今月に入り、燃料価格の上昇を理由にサンティアゴの地下鉄がピーク時の値段を830ペソ(約126円)と、約4%引き上げたことだ。これに学生らがデモや一斉無賃乗車で対抗。18日にデモ隊の一部が過激化し、サンティアゴでは駅やビル、警察署などが燃やされた。現地からの情報では、商店からの略奪行為なども発生しており、18日だけで少なくとも300人以上の逮捕者が出ているという。
治安当局が催涙ガスを使った鎮圧に取り組んだものの、抑えきれなくなり、同日夜に政府が非常事態を宣言した。チリでは1990年まで続いた軍事独裁政権の記憶が色濃く残っており、移動の自由を含む国民の権利を制限する一連の措置は異例の対応となる。
ピニェラ氏は19日、値上げの凍結に加え学生らとの対話も提案。「誰もが平和的なデモの権利を持っているが、誰も同胞の安全を脅かすことはできない」と述べたが、依然として各地で暴動は続いており、事態収拾のメドは立っていない。
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