ジョンソン首相は離脱延期法に逆らわずEUに申請したものの署名はせず。同時に「私は31日までに完了できると依然確信している」と主張する書簡も送った(19日)=ロイター
【ロンドン=篠崎健太】英国のジョンソン首相は19日、欧州連合(EU)に対し10月末からの離脱延期を申請した。EUとまとめた新たな離脱案の採決が同日の英議会下院で見送られたことを受け、9月に成立した離脱延期法に従って書簡を送った。受け取ったトゥスクEU大統領はツイッターに「加盟国の首脳と協議を始める」と書き込み、対応策を検討する考えを示した。
ジョンソン氏は2種類の書簡を送った。1つは離脱延期法に付属する申請文のひな型をコピーしたもので、署名をしなかった。もう一方の書簡には自署したうえで英政府の立場を詳しく書き込み「さらなる延期は英・EUの利益と関係を損なう」と訴えた。引き続き10月末の離脱をめざすとし、議会の承認獲得に自信があると説明した。
英政府はEUと17日、英領北アイルランドの通関手続きを本土と別扱いにするなどの修正を加えた新離脱案で合意した。19日の下院で承認をめざしたが、超党派の議員が万が一の「合意なき離脱」を避けるために出した、離脱を実行する英国内法の整備が済むまで承認を保留するとの修正動議が可決された。このため採決は先送りになった。
政府は法律で、離脱案が19日までに議会で承認を得られなければ、2020年1月末までの離脱延期の申請を義務付けられていた。ジョンソン氏は採決保留が決まった直後、下院議員を前に「延期は交渉しない」と宣言した。法に逆らうことはせず延期を申請したものの、署名を避けたことで自身の意図に反するものだと強調した形だ。
ジョンソン氏は10月末の離脱を諦めておらず、間に合うように週明けから必要な立法手続きに着手する構え。EUへの書簡でもその方針を説明し「私は31日までに完了できると依然確信している」と主張した。だが下院の賛成多数を得られるかは不透明で、10月末に円滑な離脱が実現できるかはなお見通せない。
英国は16年6月の国民投票でEU離脱を選んだ。当初は19年3月29日に離脱する予定だったが、これまで下院での離脱案承認が得られず2度延期された。離脱延期には英国を除くEU加盟27カ国すべての賛成がいる。10月末からの延期が認められれば3度目となる。