リブラ逆風一段と G20「当面認めず」で一致

2019/10/19 18:58
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18日、米ワシントンで記者会見する麻生財務相(左)と日銀の黒田総裁=共同

18日、米ワシントンで記者会見する麻生財務相(左)と日銀の黒田総裁=共同

【ワシントン=小太刀久雄、北京=原田逸策】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は18日、米フェイスブックが主導する「リブラ」などのデジタル通貨には「深刻なリスク」があるとの合意文書をまとめて閉幕した。通貨当局として懸念を解消するまで認めない方針で、巨大IT(情報技術)による通貨発行への逆風は一段と強まった。一方、水面下では主要国の通貨覇権争いもちらつく。

新興国を含むG20の財務相・中銀総裁らがリブラ問題を本格的に協議したのは今回が初めてだ。黒田東彦総裁は「懸念に対応できるまで発行されるべきではないとG20全体で合意できた」と述べた。世界の国内総生産(GDP)の8割以上を占めるG20の通貨当局が認めない中で、仮にリブラの発行を強行しても、個人や企業で利用が広がる可能性は低い。

国際機関は対リブラ包囲網を築きつつある。資金洗浄(マネーロンダリング)対策を議論する金融活動作業部会(FATF)は、リブラを含むドルや円などの通貨を裏付け資産とする「ステーブルコイン」も規制対象になると決めた。犯罪資金の温床にならないよう利用者の本人確認をどう徹底するかも求められる。

金融安定理事会(FSB)はデジタル通貨への規制について20年7月に最終報告書を出す。国際通貨基金(IMF)は金融政策を含むマクロ経済への影響を分析する。

米中貿易摩擦や地政学上の問題が増えているなかで、G20がこの問題で協調するのは、各国が国内で通貨を発行する権限は主権にかかわる不可侵の領域との意識がある。政府・中銀が全く把握できないところで巨額の資金が国境を越えて流通すれば、国内の通貨供給量が分からなくなり、物価も乱高下しかねない。金融・財政・税制などの経済政策を有効に使えなくなるおそれがある。

ペルーのベラルデ中銀総裁は17日、リブラを「非常に悪い構想」と批判した。フランスのルメール財務相は英フィナンシャル・タイムズに「一企業が公共財を支配するのは受け入れがたい」と指摘している。一方、チリ中銀のマルセル総裁は日本経済新聞の取材に「中銀も決済システムの改革に乗り出さないとリブラのような新興勢力がその役割を担うだろう」と危機感を示した。

ただG20も必ずしも一枚岩とはいえない。中国もリブラの規制に賛成だが、欧米諸国が挙げるのとは別にもう一つの理由がある。リブラはドルの通貨覇権を強めかねないと警戒する。

リブラの裏づけ資産には中国の通貨人民元は含まれない見通し。中国はリブラは米ドルと連動するのではないかと疑っており、「デジタル通貨でも米国が覇権を狙う動き」(中国人民銀行の幹部)と映る。

リブラに対抗するためにも、人民銀はデジタル通貨を自前で発行する準備を急ぐ。人民銀の易綱総裁によるとデジタル人民元の目的は現金の代替だ。現金の流通を減らし、携帯決済で把握が進んだお金の流れをさらに透明にする狙いだ。現金持ちだしによる海外への資本流出を減らす思惑もある。

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