米、欧州名産品を標的 貿易摩擦の戦線拡大
【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権は18日、欧州連合(EU)の航空機補助金が世界貿易機関(WTO)協定違反だとして航空機やワイン、チーズなどに最大25%の報復関税を発動した。欧州各国の名産品を標的とし、補助金撤廃を求めて圧力を強める。米欧は自動車や農産品でも対立する。景気減速懸念が広がるなか、新たな関税合戦は経済の重荷となる。

フランスやドイツなどから輸入する航空機に10%、約160品目の食料品や工業品に25%の関税を上乗せした。対象製品の規模は対EU輸入額全体の約2%にとどまるものの、仏産ワインやイタリアのチーズ、英国のウイスキー、ドイツのカッター・ナイフなど各国の名産品を狙い撃ちしたのが特徴だ。
エアバス関連の工場を持つのは仏独などに限られる。巻き添えとなった他の加盟国で不満が広がれば、EUとして一枚岩で抵抗しにくくなる。貿易摩擦では「象徴的な製品に報復し相手側の翻意を促すのは常とう手段」(米通商専門家)だ。米国が2018年に課した鉄鋼関税では、EUがバーボンや二輪車など米国の名産品に報復関税をかけた。
米国にも副作用がある。チーズ輸入業アンブリオーラのフィル・マルフッジ最高経営責任者(CEO)はEUからのチーズ輸入が3割減ると予想し「スーパーの棚から高級チーズが消えるかもしれない」と指摘する。米デルタ航空は20年以降に受け取る予定の機体の関税負担をどうするかエアバスと協議中だ。
米欧の関税合戦が鉄鋼と航空機の他に広がる可能性も否定できない。米政権は11月中旬までに自動車への追加関税を判断する予定だ。日本は貿易交渉を早期決着させたことで米国による追加関税を当面避けられる見通しだが、米欧は農産品や自動車を議論するのか交渉の入り口でもめている。
20年の大統領選を控えるトランプ大統領は中国と部分合意に動くなど堅調な経済の維持に躍起だ。それでも16日のイタリアのマッタレッラ大統領との共同記者会見では「EUとの貿易不均衡は非常に大きいので、関税戦争で負けるわけにはいかない」と強気の姿勢を貫いた。