北朝鮮の漁船衝突映像を公開 政府、正当性を強調

2019/10/18 22:15
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接近する北朝鮮漁船(奥)に放水する水産庁の漁業取り締まり船(7日に衝突した際の映像)=水産庁提供

接近する北朝鮮漁船(奥)に放水する水産庁の漁業取り締まり船(7日に衝突した際の映像)=水産庁提供

政府は18日夜、水産庁の取り締まり船と北朝鮮漁船の衝突時の映像を公開した。日本側に瑕疵(かし)がなかったことを国内外に示す狙いだ。野党が映像をもとに、取り調べや逮捕をしなかった対応への批判を強める可能性がある。北朝鮮側の反発も必至だ。

「当たる、当たる。当たった」。衝突の様子が記録されているのは約13分の動画の3分を過ぎたあたりだ。衝突は7日午前9時10分ごろ、能登半島沖の北西約350キロの海域で起きた。

水産庁の「おおくに」が排他的経済水域(EEZ)から退去するよう呼びかけ、従わなかったため放水を始めたところから映像は始まる。

「当たり始めました」。おおくにが直進しながら、左舷側に放水していると、漁船が急に接近し衝突が生じた。その後、漁船は沈没した。

投げ出された乗組員約60人はおおくにの救命艇で救助し、別の北朝鮮船に収容され立ち去るところまで映像が続く。

政府は当初、公開に慎重だったが方針を転換した。水産庁の担当者は18日夜の記者会見で「取り締まりが適切だったことを理解してもらうために公開した」と説明した。

公開したのは与野党から取り調べや逮捕をしなかったことに批判が上がっていた事情もある。北朝鮮に毅然とした対応を示し、情報開示に積極的な姿勢を見せることで与野党の不満を吸収する効果を期待した。

北朝鮮は公開で態度を硬化させる可能性がある。すでに日本側が世論をミスリードしていると主張し、賠償も請求している。

衝突が起きた大和堆周辺のEEZ内は北朝鮮の違法操業が増えていることがかねて問題になっていた。取り締まりは容易ではない。

今回は漁をしていることは確認できなかったが、漁船にイカが干されていたことなどから、疑わしいとして退去を求めた。EEZ内で違法な操業をしていれば、漁業主権法に違反したとして逮捕などの警察権を行使することは可能だ。

政府は乗組員が海上に投げ出されたため、人命救助を優先したと説明する。取り締まり船は警察権を行使できる漁業監督官が1人しか乗船していなかった。政府関係者は「あの状況で逮捕や取り調べをするのは現実的ではなかった」と話す。

北朝鮮が大和堆周辺の海域を自国のEEZと主張しているのも事態を複雑にしている。日本が周辺海域で逮捕していれば、北朝鮮とのあつれきが深まったのは確実だ。

日本はそもそも北朝鮮を国家として認めていないため、両国間でEEZの境界を画定する協議をすることは難しい。自民党内には海上保安庁による監視の強化を求める声があるが、海保の態勢整備も追いついていない。

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