五輪マラソン、一転札幌へ コースも警備も白紙

2020年東京五輪のマラソンと競歩が一転して札幌市で開催される見通しとなった。国際オリンピック委員会(IOC)は真夏の東京の暑さを理由としているが、本番まで10カ月を切った段階での会場変更は異例だ。大会関係者からは「解決すべき課題が多すぎる。間に合うのか」と焦りの声が上がっている。
予定されていたマラソンコースは新国立競技場をスタートし、浅草や銀座などを回って新国立競技場にゴールする。9月にはテスト大会を兼ねてほぼ同じコースで「マラソングランドチャンピオンシップ」が行われた。
札幌市では例年夏に「北海道マラソン」が開かれているが、五輪のコースはこれから選定することになる。IOC側は札幌ドームをスタート・ゴールとする案を出しているという。

警察による警備や交通規制も一から練り直す必要がある。「警備員も現地だけでは足りず、他の都市からかき集めることになる可能性がある」と政府関係者は話す。
北海道マラソンで沿道の観客に対応するボランティアは約4千人。「五輪では2倍以上必要になる」(大会組織委員会関係者)という。
マラソンの観戦チケットの一部は既に販売済みで、男子は新国立競技場のA席が6千円。女子はA席3万円で他のトラック競技など5種目も観戦できるチケットとなっており、払い戻しなどの対応が課題となりそうだ。
五輪の選手は原則として選手村に滞在し、会場が遠い場合は組織委がホテルなどを借り上げた「分村」を準備する。大会期間は夏の行楽シーズンだけに、札幌市周辺で選手や大会関係者の宿泊先を大量に確保するには相当の追加費用がかかるとみられる。
小池百合子都知事は17日「快適な五輪の準備をしている最中にまさに青天のへきれき」と不快感を示したが、組織委の森喜朗会長は「(IOCの提案を)組織委としては受け止めなくてはいけない。都などと相談したい」として会場変更を容認する姿勢を示した。
北海道の鈴木直道知事は「どのような結果になっても東京大会を成功させるために万全の体制で臨みたい」と述べた。
組織委の幹部は「一日も無駄にできないので、(札幌への)変更前提でやれることを進めなくてはいけないだろう」と話している。