最高齢 計260歳バンドが円熟ジャズ 大阪で解散公演
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2019/10/18 7:01
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神戸ジャズストリートで演奏する「ゴールデン・シニア・トリオ」(神戸市中央区)

神戸ジャズストリートで演奏する「ゴールデン・シニア・トリオ」(神戸市中央区)

メンバーの平均年齢が世界最高のバンドとしてギネス記録を持つジャズバンド「ゴールデン・シニア・トリオ」が解散を決めた。27日、エルセラーンホール(大阪市北区)で最後のコンサートを開く。3人の年齢は合わせて260歳。世界一の円熟サウンドで、有終の美を飾る。

13日、神戸市内で開かれた「神戸ジャズストリート」の会場のホテルに3人が現れた。1曲目は「As Long As I Live」。ピアノの大塚善章(85)が3人と重ね合わせるように「生きてる限りは、目の黒いうちは、という意味です」と紹介すると、会場がどっと沸いた。

演奏が始まると、宮本直介(82)の重々しいベースが音楽を支え、大塚のピアノが自由に駆ける。最高齢のビブラフォン、鍋島直昶(なおてる)(93)は介助者に体を支えられながらも、軽快にバチを走らせた。

2008年トリオ結成

3人の来歴はジャズの戦後史そのものだ。佐賀藩主の子孫にあたる鍋島は幼少期に音楽教育を受け、戦後は全国の進駐軍キャンプで演奏した。ピアノを弾いていたが、仙台に駐留していたビブラフォン奏者、エミル・リチャーズの演奏に魅せられ転向。1959年から関西を拠点に活動する。

高津高校(大阪市天王寺区)の校歌を在学中に作曲するなど才能を発揮していた大塚は、大阪・ミナミのダンスホールでジャズと出合い、自らのバンドを結成。関西学院大でバンド活動をしていた宮本は、戦後ジャズブームをけん引したドラマー、ジョージ川口に才能を見いだされ「ビッグ・フォア・プラス・ワン」のメンバーに抜てきされた。

長い演奏活動の中で共演機会も度々あったが、2008年の敬老の日にトリオを組んだ。きっかけはあるパーティーで共通のファンから演奏依頼を受けたこと。バンド名まで決められていたため、そのまま活動を続けることにした。

世界最高齢バンドとしてギネス認定を受けたのは15年のこと。関西ジャズ協会会長も務める大塚は「東京に比べ関西のジャズはマイナーで、有望な若手は出て行ってしまう。関西からなんとか世界に発信したいとの思いからの『世界一』だった」と力を込める。

「能のような間」

ドラムのない編成は、「繊細なピアニッシモを聴かせられる」(宮本)ことが特色だ。大塚は「鍋島さんのスピード感あるメロディーラインに、どっしりした宮本さんのベース。僕は安心して和音の形を作っていける」とそれぞれの役割を語る。リーダーは決まっていないが「それぞれの良いところも、悪いところも知っていて、カバーし合える仲間だ」(鍋島)。

最大の魅力は最高齢バンドとしての円熟味だ。「ジャズで一番重要なのは、能のような間なんだ」――。宮本は若い頃、同年代のサックス奏者であるウェイン・ショーターから助言を受けた。「若い頃は音を重ねることに力を入れていたけど、年をとるごとに彼の言葉が分かってくる」と宮本。鍋島も「しゃかりきになって弾いていた頃とは音楽が変わった」とうなずく。

3人とも生涯現役を貫くつもりだが、鍋島は「足腰を使った演奏がしんどくなってきた」としんみり語る。皆が元気に演奏できるうちに、トリオでの活動には終止符を打つことにした。27日の解散コンサートでは、これまでの活動を振り返るトークショーも開く。

演目は「今までやりたいけど、できなかった曲をやりたい」と大塚。鍋島は「十八番である『スターダスト』は最後にキメたいね」と意気込む。ジャズマンは格好良くないとダメ――。そんな信念を貫く3人が、引き際の美学をみせる。

(西原幹喜)

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