米企業活動、停滞鮮明に 米中貿易戦争響く FRB報告
「関税でコスト増」「工場建設を延期」

2019/10/17 11:13
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【ニューヨーク=大島有美子】米連邦準備理事会(FRB)が16日発表したベージュブック(地区連銀報告)では、長引く米中貿易戦争で企業活動が滞る状況が浮き彫りとなった。景気の基調判断について「わずかか、または緩やかに拡大」と下方修正した。12月に対中制裁関税の第4弾が迫るなか、米企業は先行きに一層の不安を覚えている。

自動車の組み立てを中国からタイやロシアに移す動きも出てきた(中国の広州市郊外)=ロイター

8月下旬から10月7日までの全米12地区の経済情勢をまとめた。基調判断は6月に「緩やかに拡大」に上方修正して以来、9月まで同じ表現で据え置いていた。

製造業は貿易戦争で企業戦略の変更を余儀なくされている。「装置会社が新工場建設を延期した」(ボストン地区連銀、ろ過膜メーカー)、「関税のコストを補うため製品価格を引き上げた」(リッチモンド地区、電気設備メーカー)といった声が寄せられた。

影響は製造業にとどまらない。クリーブランド地区の小売業は9月に発動した対中制裁関税で「衣料や食料の仕入れコストが増加した」。多くを販売価格に転嫁したが、市場シェア維持のため利益を削って吸収している会社もあるという。農業では中国の報復関税により、サンフランシスコ地区で中国向けの「木材の輸出が減り、収穫面積を減らし始めた」(林業)、「チェリーとナッツの輸出が明確に減った」(農業)といった動きが報告された。

米国経済は強い労働市場に支えられた個人消費と、住宅市場がけん引している。ただ同日発表の9月の小売売上高は前月比0.3%減となり、7カ月ぶりに前月を下回った。今回の報告でも個人消費に先行きへの不安がにじんだ。

「関税で家庭用品の輸入コストが上がってきたが、消費者は値上げを嫌がる」(ニューヨーク地区の小売りチェーン)。消費者の購買力が弱まれば、企業は関税によるコスト増を転嫁しにくくなり、企業収益を圧迫する可能性がある。住宅業界でも「次の景気後退に備え、新規の投資、建設をためらうようになってきた」(ボストン)という。

米国の労働市場は底堅く、失業率は約50年ぶりの低さだ。ただ貿易戦争に起因する先行きの不透明感から、一部の地区では「5%の従業員を解雇した」(製造業)といった動きもみられた。「最低賃金が上がったため、従業員数を再考せざるを得ない」(セントルイス地区、食料品店)など労働需給の逼迫がもたらす副作用も報告された。

今回の報告書は、29~30日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けた準備資料として重視される。報告書では現状の景気判断を引き下げただけでなく、先行きについても「多くの企業で半年から1年先の景気見通しが悪化している」とした。景況の悪化を受け、米短期金利市場で織り込まれる10月の利下げ確率は9割となり、8割だった前週より高まった。

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