冒険の世界リアルに再現、 カプコンの音響デザイナー
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2019/10/21 7:01
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刀を振るときの力強さを演出するため、自作の道具で金属音を入れる=目良友樹撮影

刀を振るときの力強さを演出するため、自作の道具で金属音を入れる=目良友樹撮影

VR(仮想現実)やクラウド――。楽しむ場が広がるゲームは、その中身も日進月歩で現実世界に近づいている。画面の中の草花も火を噴くモンスターも、目の前で見るような臨場感だ。画面と共にこうした世界観を支えるのが「フォーリーアート」と呼ぶ効果音。カプコンのスタジオでは存在しない音の探求が続く。

大阪・北浜の本社近くのテクニカルセンター。スタジオ内でシニアサウンドデザイナーの北村武さん(49)が手にするのは小型のアルミ鍋。建設現場で目にする工具などと一緒にランドセルの中に投げ込んだ。

ヘッドホンを着けマイクの前でランドセルを揺らす。目の前のモニターに映るゲームの主人公の動きに合わせて揺らし方を調整し、金属音に変化をつける。

カットがかかると、調整室に移動。映像とのバランスを見る。「うん、いい感じ。低音はカットで」。映像と組み合わせると、金属をつめたランドセルの演出が、よろいを着た主人公が草むらを走る音として再現された。

「革のきしみ、ほどよい空洞感。金属の響きに味がある」。北村さんは自身が長く追求してきた音をこう評価する。北村さんのようなフォーリーアーティストは当初、映画が中心だった。ゲーム機やパソコンの高性能化につれ、今ではゲームの映像や音楽などにも細かな演出やリアルさが求められるようになっている。

フィクションが前提のゲームには、登場する武器や装備が身近にない場合が多く、動きや音を想像するのも難しい。参考にしたのはSF映画だ。「指と指が触れるあの音は」。映画「ET」を手がけたハリウッドスタジオにも教えを請うた。映画のエンドロールで見た名前を直接尋ねたこともある。

ゲームの場面が現実世界と同じなら、その音を使えばいいのか。そう単純な話でもない。マイクで録音すると違う音に聞こえてしまうこともあるのだという。例えば、9月発売の「モンスターハンターワールド:アイスボーン」。舞台は氷の世界だ。ペットボトルを潰す音や丸めたアルミホイルを広げる音を組み合わせ、氷が解ける音などを作り出し「氷上の冒険」を演出した。

筋書きが一つの映画と異なり、ゲームならではの苦労もある。ゲームは遊ぶ人の操作によって画面内の動きやシナリオが変わる。それに合わせ多種多様な音を用意しなければならない。

北村さんが音に目覚めたのは大学時代に映画製作に携わり、音響を担当してから。効果音づくりの楽しさを知り、1994年に高機能化が進むゲーム業界の門戸をたたいた。

「自分で音を作るのが仕事」。いまや暮らしから画面の世界につながる音を探す毎日だ。現実以上に没入感が求められるゲームの世界には「本物以上の本物らしさが必要」と北村さん。「これ、ドアが開く音に使えるかな」。北村さんには近所のホームセンターも宝の山に感じる。

(川崎なつ美)

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