韓国、景気テコ入れへ正念場
通貨政策に限界 財政出動も効果未知数

2019/10/16 19:07
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【ソウル=鈴木壮太郎】韓国銀行(中央銀行)は16日、政策金利を年1.5%から1.25%に引き下げ過去最低とした。「景気浮揚には力不足」とみて、市場の関心は追加利下げに移る。経済政策への風当たりが強まる文在寅(ムン・ジェイン)政権も積極的な財政出動で景気テコ入れをめざすが、効果は未知数だ。

「輸出と設備投資の不振が続くなか、消費の伸びも鈍り、成長鈍化の流れが続いた」。韓国銀の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は16日の記者会見で、今年2回目となる利下げに踏み切った理由をこう説明した。

国内総生産(GDP)の4割を占める輸出は不振が長引いている。9月は前年同月比12%減。10カ月連続のマイナスで、6月から2ケタ減が続く。10月も10日までの暫定値は10%減と、改善していない。

主力産業の半導体を中心とした輸出不振は設備投資を冷え込ませている。韓国銀行は4月時点で0.4%増と予想した2019年の設備投資を7月に5.5%減に下方修正した。

需要も弱含みだ。9月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は統計開始以来、初のマイナスに転じた。韓国銀や政府は昨年に猛暑の影響で農産物の価格が急騰したことの反動などと説明する。

李氏も「しばらく0%前後で推移し、来年は1%台になる」とデフレを否定する。ただ卸売物価を示す生産者物価指数(PPI)もマイナスが続き、デフレ懸念は拭えない。

今回の利下げは市場の予想どおりだが「景気浮揚と物価安定という目標を達成するには力不足」(韓国経済研究院)という受け止め方が大勢だ。市場では来年1~3月期の追加利下げ観測が浮上する。李氏も16日「必要に応じて、金融・経済状況の変化に対応する余力は残っている」と追加緩和の可能性を示唆した。

ただ、金利が過去最低まで下がったいま、韓国銀が打てる選択肢は狭まっている。李氏は8日、国会で「通貨政策による効果には制約がある。むしろ財政政策の効果が大きいのが事実だ」と政府の役割を強調した。

景気低迷に強い危機感を募らせているのは文政権も同じだ。17年5月に発足した文政権は「所得主導の成長」を掲げ、最低賃金の大幅引き上げや非正規職の正規職化など分配重視の政策にカジを切った。だが成果は上がらず、経済成長率は下降の一途をたどる。

最優先で取り組み、国民の支持も高かった南北対話への期待感はしぼんだ。世論の反対を押し切っての曺国(チョ・グク)氏の法相任命強行は失敗に終わり、対抗勢力である保守派の復活を許した。経済失政の批判が強まれば来年4月の総選挙で与党が苦戦しかねず、文政権への求心力が急低下しかねない。

韓国政府は20年度(1~12月)予算案で歳出を9%増やし、金融危機後で最大とした。日本に依存する部品・素材の国産化などの研究開発や雇用対策に充て、景気をテコ入れする。

韓国経済を一本足で支える半導体は市況底入れの兆しが見え、サムスン電子は大型投資を再開する。ただ、造船や自動車などこれまで成長を支えてきた他の製造業は競争力の低下が目立つ。一方、カーシェアなど新ビジネスは規制や既得権層の反対に阻まれ育たない。

「過去の金融危機とは違い、いまは実体経済の危機だ。骨粗しょう症と同じで痛みはないが、進行すれば立ち上がれない」。文政権で経済政策のブレーンを務めた金広斗(キム・グァンドゥ)西江大教授は、従来の延長ではなく経済の構造を変える必要があると警鐘を鳴らす。

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