香港、住宅供給で不満解消狙う 行政長官演説

2019/10/16 18:25
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【香港=木原雄士】香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は16日、テレビを通じて施政方針演説に臨み「すべての香港市民が自分の家を持つことができるようにする」と表明した。長引くデモの背景に住宅不足など社会問題があるとみて、市民の不満を和らげる狙いだ。ただ普通選挙など政治改革には触れず、混乱の収束は見通せない。

林鄭行政長官は16日、激しい抗議を受け、立法会での演説を断念した=ロイター

演説は立法会(議会)の開会にあわせて行われる予定だったが、民主派議員が議場で激しく抗議し、テレビを通じて演説する異例の形式となった。政府が16日に予定していた「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回する手続きは23日に延期になった。

林鄭氏が演説で力を入れたのが住宅や土地の供給に関する政策だ。香港は東京都の半分の面積に約740万人が暮らし、土地不足や住宅価格の高騰が深刻な問題になっている。林鄭氏は公営住宅の順番待ちの人のための一時的な住宅を今後3年で1万戸建設する目標や、初めて住宅を購入する人の借入限度額を引き上げると表明した。演説を受けて不動産大手の株価は軒並み上昇した。

6月に始まった大規模デモは条例改正案撤回だけでなく、民主的な選挙制度や警察組織の刷新を求める運動になった。香港政府は景気低迷を理由に子育て世帯や中小企業への支援策も打ち出し、なりふり構わずデモを抑え込む狙いがある。

一方、林鄭氏は過激なデモには厳しい態度で臨む姿勢を鮮明にした。演説の冒頭で「一部の暴徒が組織的かつ計画的に攻撃を始め、人々の日常生活を混乱させた」と批判した。中国からの独立を主張したり中国の主権を脅かしたりする行為は許さないと強調し、デモ隊が批判する警察や香港鉄路(MTR)の努力をたたえる場面もあった。

デモ参加者が求める普通選挙の導入や警察の暴力行為を調べる独立委員会の設置には触れず、政治的な要求には応じない姿勢を示した。6月以降、大規模デモを主催してきた民主派団体、民間人権陣線は演説後に「林鄭氏は(普通選挙などの)五大要求を受け入れ、辞任するのが最善だ」とする声明を出した。

林鄭氏の支持率は一連のデモへの対応で急落し、歴代の行政長官の最低を更新中。今回の演説がデモを抑え込む効果はほとんどないとみられる。20日にはデモ参加者のマスク着用を禁じる「覆面禁止規則」に抗議する大規模デモが呼びかけられている。

民間人権陣線は16日夜、リーダーの岑子杰氏が16日夜、4~5人の集団に襲撃されたと明らかにした。岑氏は頭部から流血し病院に運ばれたという。民間人権陣線は声明で襲撃を強く非難した。岑氏は民主活動家で、大規模デモを主催して警察と交渉にあたるなど主導的な役割を果たしていた。以前にも何者かに襲撃されたことがある。

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