戦後生まれミックスジュース、大阪から世界へ
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関西タイムライン
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2019/10/17 7:01
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大阪の食べ物はあまたあれど、大阪の飲み物といえばミックスジュースだ。阪神・大阪梅田駅前の専門店では1日平均1500杯飲まれている。阪急の大阪梅田駅構内にも7月、専門店が登場した。売れ残った果物を活用したのが誕生のきっかけといわれており、船場商人の教えに通じる大阪らしい飲み物だ。2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて外国人に飲んでもらう取り組みも始まった。

ミックスジュース発祥の店といわれているのが大阪・新世界の千成屋珈琲だ。「初代店主が果物を無駄なく最後まで大切に思う気持ちから生まれた。この気持ちを受け継ぎたい」と話すのは4代目店主、白附克仁さんだ。2016年に3代目が体調を崩して一時閉店する危機に直面するが、これを救ったのが白附さん。「新世界の街づくりに貢献していく」と熱い思いで創業家を説得し、17年の再オープンにこぎ着けた。

■船場商人の知恵継ぐ

千成屋珈琲は1948年、初代店主の恒川一郎さんが果物屋として立ち上げた。創業間もないころ、売れ残った完熟の果物を生かせないかと悩んでいた。ある時、皮が傷んでも中身が大丈夫ならジュースにすれば良いと考え、牛乳で味をなじませることを思い付いたという。船場商人の心得の一つ、物を余すところなく使い切る「始末の精神」につながる発想だった。

1950~60年代には関西の喫茶店に広がり、基本的なレシピも共有された。牛乳や乳製品をベースに果物はバナナを中心にリンゴ、ミカン、桃などを組み合わせて撹拌(かくはん)。時には氷も一緒にミキサーにかけるというものだ。2003年前後にサンマルクホールディングス傘下のサンマルクカフェが「大阪ミックスジュース」の試験販売を開始。現在全国約400店全てで提供している。丸福商店(大阪市)も丸福珈琲店など全国約30店で扱い、関西以外でも認知されてきた。

関西人からどれほど愛されているかがわかるのが、サカイ(大阪市)が運営する阪神・大阪梅田駅前の「梅田ミックスジュース」店だ。税込み150円の手ごろさもあって1日平均1500杯出る。「阪神に乗る時によく飲む。手軽で体に良さそう」と40代OL。20代女子学生は「さっぱりしてシャキシャキ感もある」という。4年前から表記に英語、中国語、韓国語を加えた結果、インバウンド(訪日外国人)の利用も増えている。11月には創業50周年を迎え、記念バッジなどの配布を計画している。

サカイは7月、阪急・大阪梅田駅の2階中央改札の構内にも姉妹店の果汁屋をオープンした。定番品のほかに「アボカドミックスジュース」といった新感覚のメニューもそろえた。

■訪日客「外国にはない驚きの味」

一方で昭和の伝統的な作り方を守り続けているのが丸福珈琲店だ。新鮮な数種類の果物と乳製品にハチミツを加えて一度撹拌し、その後に砕いた氷を加えて再びミキサーにかける。2度のミキシングで均等になじませ、のどごしを良くしている。最近は「懐かしい味」と再評価する高齢者のファンが増加。同窓会や同好会の団体やグループが来店すると、数杯単位で注文が入ることが多いという。

ミックスジュースはどんな飲み物に進化していくのだろうか。丸福商店の担当者は「丸福のコーヒーやミックスジュースを海外で飲んでもらいたい」と海外を視野に入れた店舗展開を見据えている。千成屋珈琲が力を入れるのがインバウンドへのアピールだ。白附さんは月2回のペースで新世界の観光ガイドを務め、毎回外国人2~10人を案内する。その際、必ずミックスジュースをふるまう。「牛乳が入っている感じがしない」「外国にはない驚きの味」と評判も上々だ。

「たこ焼き、串カツに比べるとまだまだ知られていない。大阪名物として海外に発信したい」と白附さん。万博に向けて関西国際空港への出店を検討中だ。大阪の"ソウルドリンク"が世界の人々の喉を潤す日はそう遠くない。(浜部貴司)

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