米Googleが目指すスマートホーム 特許で読み解く

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スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2019/10/18 2:00
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米グーグルはスマートホームで何を目指すのか(米シリコンバレーの本社)

米グーグルはスマートホームで何を目指すのか(米シリコンバレーの本社)

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 「すべての情報を整理してアクセス可能にする」。この目標に向かって次々と手を打ってきた米グーグル。パソコン、スマートフォンに続く、同社の新たな情報整理の舞台の一つが、家庭内の設備を賢く動かす「スマートホーム」だ。グーグルはスマートホームを通じて家の中のどんな情報を集めて、何をするつもりなのか。同社が申請した関連特許からCBインサイツが読み解いた。

グーグルは「スマートホーム」を次の段階に進化させたいと考えている。

同社は2013年以降、スマートホーム関連の特許を125件申請し、温度コントロール(サーモスタット)を手掛ける米ネスト・ラボを買収したほか、多くのスマートホーム機器を発売している。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

室温から娯楽システムまでありとあらゆるモノを自動化するだけでなく、未来の「つながる家」に向けた大胆な戦略を示している。特許では、スマート機器が収集するデータを活用し、家庭が判断を下すための情報を提供する姿を描いている。例えば、子どもがテレビを長時間見すぎている場合に電源を切ったり、その家のエネルギー使用量を全体で5%減らしたりする。

この特許の目的は、スマート機器をより効率的に具体的に活用できるようにすることにある。しかし、特許が説明しているシステムはプライバシーや利用者の同意、セキュリティーに関する懸念を引き起こす恐れもある。

この記事では、特許の中身と、それがなぜ重要なのかについて説明する。

■この特許の仕組み

グーグルが18年10月に申請した特許は、家中のスマート機器が収集した一定のデータを検知、分析、通知することで、その家庭の「目標」達成を支援するのが狙いだ。目標には摂取カロリーを減らす、戸外で過ごす時間を増やす、怒鳴る回数を減らす、ネットの利用時間を短くするなどがある。

目標は家族の一員(子ども向けの制限は親が設定する)か、家族とスマート機器とのやり取りに基づいて機器が提案する。

特許では、スマートサーモスタットやスマートプラグ、ネットに接続された冷蔵庫やテレビ、洗濯乾燥機、照明、警報システム、ステレオ、プールのヒーター、排水システム、監視カメラなどに搭載された家中のセンサーにつながった「家庭内取り決め管理システム」を描いている。

管理システムは、これら全てのセンサーにつながっており、それを駆使してその部屋に誰がいて、何をしており、どんな状態で、あらかじめ設定された目標とどんな関連があるのかを判断する。

例えば、家族の一員が毎日一定の時間(例えば朝8時)に出勤する目標の達成を支援するため、管理システムが「交通機関の遅れに応じて目覚まし時計を柔軟に調整する」という機能について説明してある。

図の例では、寝室にあるスマート機器のマイクとビデオカメラを使い、家族のシドニーさんが1人で家にいることを特定した上で実行に移す。このケースでは、玄関のドアを施錠し、認識済みの別の人物が帰宅するまで施錠された状態を保つ。

従来のスマートロックでは、スマートフォンのアプリやキーパッドを使って手作業で出入りする。一方、グーグルの管理システムは誰がいつ家にいるかに応じて自動でドアを施錠するため、人的ミス(ドアのカギを閉め忘れるなど)がなくなる。

利点の一つは、親が見ていなくても子どもを追跡したり、見守ったりすることができる点だ。子どもが1人で家にいると親に通知するほか、子どもの行動を追跡し、電子機器の使用を制限する。

■この特許が重要な理由

室温を自動調整するサーモスタットから、ケール(野菜の一種)がなくなりそうになったら教えてくれる冷蔵庫まで、家庭で使われる「スマート」製品は増えている。

家庭で使われるスマート製品が増えるたび、そのエコシステム(生態系)を制御、維持するのはますます複雑になる。グーグルは同社の新たな「取り決め管理システム」を導入すれば、個々のスマート機器を維持、制御する必要がなくなり、目標を決めるだけでよくなるとうたう。

グーグルは特許申請書類でこう述べている。

「社会の進化に伴い、家庭も多様化し、それぞれの基準や流儀、ルールを持つようになる。だが残念ながら、いわゆるスマート機器はこれまで、あらかじめ決まった働きと機能で設計されている。このため、多様化しつつある家庭の基準や流儀、ルールに対応した利用ができるかという観点からすると、スマート機器の進化は比較的遅れていた」

グーグルはスマートセンサーが家庭の変化に対応できるようになると考えている。ただ、この特許が未来にとってどんな意味があるのかという点では懸念が生じる可能性もある。つながる社会はさらに進むからだ。

例えば、こうしたセンサーは利用者がいつ声を荒らげて口論しているのか、人がいつ家を出入りしたか、さらには家族の一員はそろって食事しているのか、それともバラバラに食べているのか、それはどのくらい頻繁なのかなど、利用者に関する極めて個人的で繊細な情報を識別するために使われる可能性がある。こうした種類の情報にアクセスすれば、このデータの利用を巡って問題が生じる可能性がある。

もっとも、特許では管理システムをネットから遮断し、外部との通信は阻止できる機能の概略も示している。そこで主張しているように、この機能を使えばデータのプライバシーに対する懸念は軽減される可能性がある。

もう一つの懸念はハッカーや悪意ある者がシステムを不正操作する可能性だ。不正にアクセスした人物が家族を追跡したり、家庭の取り決めに変更を加えたりする恐れがある。例えば、その家のシステムに不正に侵入し、全てのカメラをコントロールしたり、ドアのロックを解除したり、警報機を止めたりなどするかもしれない。

さらに、システムが故障する可能性もある。例えば、スマートオーブンの電源が誤って入れば、悲惨な事故が起きるリスクが高まる。

グーグルはこの特許を活用した製品を発売する計画はまだ示していない。だが、こうした性質を持つシステムを展開しようとすれば、反発を受ける可能性がある。

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