米加州で新個人情報保護法 欧州上回る企業負担も
初期対策費5.9兆円と試算

2019/10/15 21:03
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ニューサム知事の署名によってCCPAの20年1月施行が正式決定した=AP

ニューサム知事の署名によってCCPAの20年1月施行が正式決定した=AP

【シリコンバレー=白石武志】米カリフォルニア州で企業に厳格なプライバシー保護を義務付ける新たな州法が成立した。プライバシー保護に熱心な欧州連合(EU)が2018年5月に施行した一般データ保護規則(GDPR)にならったルールだが、GDPRよりも対応負担が重くなる企業も出てきそうだ。20年1月の施行まで残された時間は3カ月足らずで、日本企業も含め急ピッチで対応の検討を迫られる。

成立した「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」は、約4000万人の州民に対し、自らの個人情報を保有する企業に収集内容の開示やデータの削除、売却停止を請求できる権利を認めた。

年間売上高が2500万ドル(約27億円)を超えるなど、一定の要件を満たす企業が規制の対象となる。カリフォルニア州に拠点がない企業でも、州住民の個人情報を持っていれば対応が必要になる可能性がある。

企業は消費者から請求を受けた場合、原則45日以内に情報を開示しなければならない。請求内容によっては個人情報を削除したり、外部企業への共有・売却を停止したりする義務がある。請求に対応できない場合、1件あたり最大7500ドルの制裁金が科される。

州法策定のきっかけとなったのは、州内の不動産業者が始めた住民立法の運動だ。18年3月に発覚した米フェイスブックにおける最大8700万人分の個人情報の不正流用事件の影響で、この運動が60万を超える署名を集めたことが圧力となり、18年6月に州議会が住民立法に代わる法案を可決した。

企業に個人情報の消去を請求できる「忘れられる権利」を定めたEUのGDPRによく似ているが、違いも多い。たとえばCCPAでは個人だけでなく世帯を特定できるデータも個人情報の対象となる。個人情報を売却・共有しないように消費者が企業に請求する「オプトアウトボタン」と呼ぶ仕組みを自社のホームページなどに設ける必要がある。米法律事務所ピルズベリーの奈良房永パートナーは「GDPRに対応済みでも、CCPAの順守には不十分であることを認識しなければならない」と指摘する。

対象企業は社内のどこにどんな個人情報が収集されているかを特定し、開示請求に応えられるようIT(情報技術)システムを改修する必要がある。州司法長官室の公表資料では、CCPAへの初期対応費用は全体で最大550億ドル(5兆9000億円)と試算する。

たとえば従業員数500人以上の企業の場合、平均的な初期対策費用は200万ドルにのぼると見込まれる。単純比較は難しいが、GDPRの平均的な年間対応費用(5700ユーロ=約68万円)を大きく上回る水準だ。

GDPRの施行前には約2年間の準備期間が用意されたが、CCPAは州議会の法案可決後も修正手続きが長引き、消費者の権利行使の手続きなどを定めた執行規則は19年10月に公表されたばかり。ほとんどの企業にとって本格的な対策はこれからだ。

米アマゾン・ドット・コムのベゾスCEOらは9月、連邦政府レベルの統一ルールを米連邦議会に要望した(写真は2018年)

米アマゾン・ドット・コムのベゾスCEOらは9月、連邦政府レベルの統一ルールを米連邦議会に要望した(写真は2018年)

日本企業も対応を迫られそうだ。トヨタ自動車の米国法人は「保持している個人情報に関する包括的なレビューを実施している」としている。日本貿易振興機構(ジェトロ)が9月実施した日系企業への聞き取り調査では「まだ法律そのものを知らないケースも見受けられた」(ロサンゼルス事務所の北條隆氏)。

米野党・民主党地盤のカリフォルニア州は連邦政府より厳しい自動車の燃費基準を設けるなど、全米に先駆けて厳しい規制を導入してきた。ニューヨーク州など10を超える州でもCCPAと同様の州法策定の動きが広がりつつある。

州ごとに異なる規制が乱立する事態を懸念し、米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)ら50社超の経営者は9月、連邦政府レベルの統一ルールを要望する公開書簡を米連邦議会に提出した。企業の対応コストが膨らめば、米国のデジタル経済分野の競争力に影響を及ぼす可能性もある。

米国ではこれまでも医療や金融など特定の分野では厳格な個人情報保護のルールが存在したが、あらゆる産業を対象とする包括的な規制はなかった。プライバシー保護に熱心とされる欧州に比べ規制が緩やかであることが、個人情報を生かしたデジタルマーケティング手法の発展などを促してきた側面もある。

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