サウジ・ロシア、米国にらみ接近 経済・安保で協力

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2019/10/15 18:28
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【リヤド=岐部秀光、モスクワ=石川陽平】ロシアのプーチン大統領が14日、2007年以来12年ぶりにサウジアラビアを公式訪問し、経済やエネルギー、安全保障の協力で合意した。トランプ米政権が中東への関与を弱めるなか、プーチン氏は米国にとって重要な同盟国サウジに近づくことで、中東での影響力強化を図る。

ロシアのプーチン大統領(左)がサウジアラビアを12年ぶりに訪問し、ムハンマド皇太子と会談した(14日、リヤド)=ロイター

プーチン氏はサウジ首都リヤドでサルマン国王やムハンマド皇太子と会談した。プーチン氏は「サウジと相互の友好的な関係を広げることをきわめて重要とみている」と表明。サルマン国王も「安全保障と安定、テロとの戦いでロシアと協力できるのを楽しみにしている」と指摘した。

両国の約300社の企業トップによる会議も開いた。両国の政府系投資ファンドが6億ドル(約650億円)を投じて航空機のリース会社を設立することで合意した。サウジの石油化学企業がロシア極東のメタノール工場に投資することも決まった。

焦点のエネルギー協力は、プーチン氏とムハンマド皇太子との会談で詳細を協議し「世界のエネルギー情勢の安定」へ協力を続けることで一致した。両国のエネルギー相は14日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国で構成する「OPECプラス」が長期的に協力を深める憲章に正式に調印した。

サウジに接近するロシアには、サウジと米国との間にくさびを打ち込み、中東での影響力をさらに広げる思惑がある。プーチン氏は9月14日にサウジ国営石油会社サウジアラムコの重要施設をねらった攻撃でも真っ先に支援を表明した。

「聖なるコーランにはいかなる暴力も許されないと書いてあるが、自分の部族を守ることは例外だという。我々はサウジに適切な支援をする用意がある」。プーチン氏は攻撃直後の記者会見でこう話し、サウジに地対空ミサイル(SAM)を売り込んだ。

サウジとロシアは石油政策では長年ライバル関係にあった。しかし、16年12月に合意したOPECと非加盟主要産油国の協調減産は両国が主導する。米シェール革命による石油価格の大幅な下落を防ぐため、異例の協力に踏み切った。

サウジ訪問は、欧米との関係を悪化させたプーチン氏が活路を求めて周到に練り上げた中東戦略の一環だ。15年のシリア空爆でアサド政権の支援に着手したのを契機に、16年にはイランにSAMシステムを納入し、17年にはイラン、トルコと初の3カ国首脳会議を開いた。トルコにも今年、SAMを売却した。

ロシアが中東進出を本格化した時期は、国外の紛争介入に否定的なトランプ氏が勝利した16年の米大統領選とほぼ重なる。今回のプーチン氏のサウジ訪問も、トランプ氏のシリア駐留米軍の撤退表明と同時期だ。ロシアに似た強権的な体制を敷く中東の大国と関係を強めるプーチン氏の動きは、欧米には脅威に映る。

一方のサウジは、トランプ政権との蜜月の恩恵を受けている。18年10月の著名記者殺害事件で国際社会の批判を浴びたムハンマド皇太子をトランプ氏は擁護し続けた。

だが、サウジには米国が突如として支援を打ち切りかねないとの不安がある。今回、プーチン氏をサウジに招待した背景には、米国に「ロシア・カード」をちらつかせ、トランプ政権のより強い関与を引き出す思惑もありそうだ。

トランプ氏はシリアの内戦で同盟相手だったクルド人勢力を見捨てる形で、米軍の撤退を命じた。15年にオバマ政権が主導して成立したイラン核合意は、サウジにとって脅威であるイランの台頭につながり、サウジは大きな衝撃を受けた。

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