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スポーツ、新技術で進化 観戦の楽しさも加速
第3回チャレンジニッポン KDDI・高橋誠社長ら講演

Tokyo2020
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2019/10/17 2:00
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講演するKDDIの高橋誠社長(右)とセイコーホールディングスの服部真二会長

講演するKDDIの高橋誠社長(右)とセイコーホールディングスの服部真二会長

日本経済新聞社は9月25日、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に向け、テクノロジーが生み出すスポーツの価値をテーマにした「第3回チャレンジニッポン」を東京・大手町の日経ホールで開いた。KDDIの高橋誠社長とセイコーホールディングスの服部真二会長が講演を行い、パネル討論で最新技術がもたらすスポーツの可能性を議論した。

■5Gで拡張体験創る

KDDI社長 高橋誠氏

KDDIの高橋社長

KDDIの高橋社長

次世代通信規格「5G」が来春ごろから始まり、大量のデータを瞬時に、ストレスなく、安心して扱えるようになります。今までの制約から解放された「UNLIMITED(無制限)」な時代です。そこで我々が考えるキーワードが「AUGMENT(拡張)」。最近言われるAR(拡張現実)の「A」とはこの言葉を示しています。拡張体験の創造でスポーツが変わると思います。

例えばアマチュアスポーツでは、センサーの入った野球ボールを2万人の投手に投げてもらい、既に100万球分のデータを蓄積しています。スポーツ用具の(あらゆるモノがネットにつながる)「IoT」化とスマートフォン(スマホ)による動画解析です。スピードや回転、フォームがスマホの映像で手軽に分かるので、選手が動きを修正したり、離れたところに住んでいるコーチからオンラインで指導を受けたりできます。

パートナー契約を結んでいる大学スポーツ協会(UNIVAS)とは、色々なスポーツの映像配信や選手のデータベース化を進めています。実際の会場で観戦する人は少なくても、選手の保護者や女性が多く視聴する試合もあります。視聴機会の拡大と共に、何度も大会を観戦する固定ファンが広がってほしいのです。

プロスポーツでは、スタジアムでの観戦体験の向上につながる活動が広がっています。試合中にスマホの映像を見る人が多いのは、現地でリアル感を味わいつつ、ディテールも知りたいという思いが強いからです。

5G時代になれば動画は今まで以上にサクサク見られるようになり、例えば(競技の一場面をあらゆる方向からとらえた)自由視点映像も楽しめるようになります。試合中にスマホで飲み物を頼み、トイレの空き状況を確認することもできます。

試合前後ならVR(仮想現実)を使ってチームの一員になり、応援の気持ちが高まる体験ブースをつくることも可能です。試合日以外でもファンが通いたくなるスタジアムになれば、稼働率が上がって収益が安定します。地域や競技ごとに異なる価値を提供できると思います。

アイデア一つで様々な制約がなくなるのが5G時代です。我々は今、九州の無人島でスマホを使って恐竜を退治する脱出ゲームを展開しています。安価でスペースにとらわれないコンテンツなので、例えば野球場を使っても同じようなイベントができます。閑散期のビジネスがプラスになるという発想です。

5Gのテクノロジーを使って体験価値を拡張し、世の中に付加価値をもたらすことでスポーツ界全体を盛り上げ、スポーツを支える人たちのビジネスを成り立たせたい。そのお金がまたスポーツ界に回っていくという、良い循環をぜひつくっていきたいと思っています。

たかはし・まこと 1961年滋賀県生まれ。84年横浜国大卒、京セラ入社。同6月第二電電(現KDDI)入社。2003年KDDI執行役員、07年取締役執行役員常務。代表取締役執行役員副社長などを経て18年4月から現職。

■計測磨き、楽しさ演出

セイコーホールディングス会長 服部真二氏

セイコーホールディングスの服部会長

セイコーホールディングスの服部会長

付加価値というキーワードが(KDDI高橋社長の)講演で出てきましたが、それはスポーツを見る側にとってのエンターテインメント性だと思います。そのためにはやはり、正確かつ公正な計測が欠かせません。

1964年の東京オリンピック(五輪)で当社はスポーツとの関わり合いを持ちました。現在のセイコーホールディングスの服部時計店と3つの製造会社が力を合わせ、36種、1278個の機材を開発、製造しました。科学の五輪とされた東京大会で、セイコーは世界初の総合的な電子計時システムを導入したのです。

セイコーが日本企業だったからではありません。ストップウオッチの「テンプ」と呼ばれる小さな部分を開発し、新次元で高性能な製品を完成させました。当時は競泳などで着順の判定を巡って紛糾することもありましたが、このストップウオッチの誤差のなさは当時としては完璧だったそうです。イノベーションを突破口に、東京五輪の公式計時に採用されたのです。

今まで夏冬合わせて6回の五輪の公式計時を担当し、世界陸上のパートナーシップは85年から続けています。

陸上の花形は100メートルでしょう。選手がゴールすると、光電管の赤外線が感知して瞬時にトラックサイドに速報タイムが表示されます。同時に「セイコーフォトフィニッシュシステム」がフィニッシュライン上の画像を1秒間に2000枚撮影し、頭、首、腕、足以外の胴体の一部がラインに達した正式なタイムの判定を行っているのです。

実際には100メートルでは2000分の1秒の単位で記録を取れますが、公式タイムは100分の1秒の単位。昨年のアジア大会で日本の山県亮太選手は10秒00の銅メダルで、銀メダルだったカタールの選手のタイムも10秒00でした。このシステムで確認すると、山県選手は9秒997でカタールの選手は9秒995。1000分の2秒の差がメダルの色を変えたのです。

(10月6日まで開かれた)カタールのドーハでの世界陸上でも様々な新技術を導入しました。短距離のスターティングブロックでは、先端部分のカメラでスタート前の選手の表情などを撮影。走り幅跳びと三段跳び、砲丸投げの計測では2台のビデオカメラによって、選手や砲丸の着地点までの水平距離を自動的に算出するというものです。

正確かつ公正な計測が非常にスムーズに行われ、選手や観客を待たせない競技運営に貢献できることは、裏方に徹する我々にとって大きな誇りです。スポーツは常に人間の限界への挑戦の連続で、同時に計測の技術革新も要求されてきました。これからもイノベーションでスポーツをよりダイナミックに、新しい切り口で楽しんでもらえるように貢献していきたいと考えています。

はっとり・しんじ 1953年東京都生まれ。75年慶大卒、三菱商事入社。84年精工舎(現セイコークロック、セイコープレシジョン)入社。2003年セイコーウオッチ社長、10年セイコーホールディングス社長。12年から現職。
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