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MGCで実感 W杯・五輪、日本スポーツ変革の好機
ドーム社長 安田秀一

Tokyo2020
(2/2ページ)
2019/10/24 5:30
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同時に、世界のスポーツビジネスシーンでは、オセロの角の取り合いが行われていることを認識しなければなりません。数兆円も資金負担があるとされる東京オリンピックですが、その収益も巨額です。ただし、現状の取り決めで収益が最も多く配分されるのは米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)という仕組みになっています。「え?」って思うのも当然だと思いますが、これは過去に破産しかけていた国際オリンピック委員会(IOC)に対して、米NBCが巨額の放映権を支払うことで合意された契約内容が収益配分の根拠になっているからです。批判もありますが、その選択は五輪のサステナビリティーを担保するためのものでした。政治に翻弄され、開催経費は膨れあがり、このままでは五輪自体が存続できなくなるという危機感からIOCは商業化にかじを切ったのです。そして、世界のスポーツはそれに追従し、アマチュアスポーツの祭典とされていた五輪にプロ選手が出場するようになり、人気の高まりはもちろんのこと、競技レベルは一気に上がりました。

日本代表の快進撃もあり、ラグビーW杯は盛り上がっている

日本代表の快進撃もあり、ラグビーW杯は盛り上がっている

アマチュアリズムをかたくなに守ってきたラグビーも1980年代後半からプロ化が進み、87年にW杯が始まりました。以前からラグビーを見ている人なら、30年前と今大会でラグビー選手の体格、パワー、スピードともに格段にレベルアップしていることが分かるでしょう。ここでも商業化の背景には、南半球でプロスポーツとして人気のある13人制ラグビーなどに選手を奪われ、このままでは15人制ラグビーが衰退するという危機感がありました。

五輪と比べればまだ発展途上でしょうが、ラグビーW杯もビジネスとして収益を上げるために綿密に考えて準備、運営されています。

■世界では40年前からビジネス化

つまり、世界では生き馬の目を抜くような、スポーツビジネスの戦い、つまりはその権益を確保するべく戦いが繰り広げられているということです。可能性あるイベントをつくり、投資をし、興行化し、マネタイズしているという事実を我々日本人はより認識すべきでしょう。

そんな動きと同様に、ラグビーの国内プロリーグの話も立ち上がっています。ただし、これも海外のリーグ運営からしっかりと詳細を学ぶべきだと思います。ラグビーは年間20試合が限度と言われています。プロ野球の約140試合と比べれば、どれだけ人気が高まっても、サステナビリティーを担保するのはそう簡単ではありません。サッカーの英プレミアリーグは92年に米プロフットボールのNFLなどの運営をモデルに設立、世界で最も繁栄するサッカーリーグとなりました。米国では米4大プロスポーツのいいとこ取りをして生まれた米プロサッカーのメジャーリーグサッカー(MLS)も急成長しています。ラグビー同様、試合数の少ないアメリカンフットボールにおいても、2020年にはNFLとは別のフットボールのプロリーグ、XFLの復活も予定されています。

話は戻って、MGCですが、僕は今後も毎年継続し、収益を上げて陸上界に果実をもたらす大会に育てるべきだと思います。スポンサー企業の業績が悪化し、撤退が相次ぐことで開催が危うくなるようなものにしないためには、海外で成功しているイベントの運営手法を徹底して研究することが大切です。

「スポーツはお金を稼ぐためのものではない」という反論が聞こえてきそうですが、国際陸連のセバスチャン・コー会長は、もう30年以上前に「もはやスポーツの世界では、お金のために競うことがオリンピックで金メダルを取ることよりも重要になってきている」とコメントしています。そんなコー会長は、40年ほど前からスポンサーを数多く引き連れ、一般企業の社長を務め、出場するレースすべてにおいて「出走料」をもらうプロランナーでした。むしろ、「走る実業家」というほうが的確かもしれません。そんな人物が、オリンピックや世界の陸上競技を取り仕切っているのですから、日本だけがアマチュアリズムに引きずられることに、むしろ違和感を覚えるべきでしょう。

約40年も前からビジネス化が加速している世界のスポーツ界。いよいよ来年に迫った東京オリンピックをただ観戦するのではなく、日本を熱狂させるスポーツがしっかりと定着していくように、海外の事例を勉強して「サステナビリティー」を確立する。ぜひ、そんなイメージを持って、2020年を迎えてほしいと思っています。

安田秀一

1969年東京都生まれ。92年法政大文学部卒、三菱商事に入社。96年同社を退社し、ドーム創業。98年に米アンダーアーマーと日本の総代理店契約を結んだ。現在は同社代表取締役。アメリカンフットボールは法政二高時代から始め、キャプテンとして同校を全国ベスト8に導く。大学ではアメフト部主将として常勝の日大に勝利し、大学全日本選抜チームの主将に就く。2016年から18年春まで法政大アメフト部の監督(後に総監督)として同部の改革を指揮した。18年春までスポーツ庁の「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」の委員を務めたほか、筑波大の客員教授として同大の運動部改革にも携わる。

(「SPORTSデモクラシー」は毎月掲載します)

安田秀一氏によるコラムはこちらもお読みください。
「進化する大谷・サニブラウン 日本の指導者進歩した?」
「女性CEOの8割が運動部系 米国学生スポーツの公平」
「フットボールはぶつかり合い 日本式戦術はもう古い」
「ZOZOも入りたいプロ野球 ガバナンスが生む磁力」

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