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MGCで実感 W杯・五輪、日本スポーツ変革の好機
ドーム社長 安田秀一

Tokyo2020
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2019/10/24 5:30
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MGCではコースの沿道に大勢の観客が詰めかけた(右から4人目が岩出玲亜選手)=共同

MGCではコースの沿道に大勢の観客が詰めかけた(右から4人目が岩出玲亜選手)=共同

ラグビーで日本が盛り上がっています。アジアで初めて開催したワールドカップ(W杯)で日本代表が初めて8強入りの快挙を成し遂げました。9月にはもう一つ、大きな盛り上がりがありました。東京五輪の切符がかかったマラソン選考レース「MGC」です。コースの沿道には50万人以上が集まったと言います。米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務め、米国のスポーツビジネスに詳しい安田秀一氏は、これらのイベントに日本のスポーツの大きな可能性を感じています。

◇   ◇   ◇

9月15日に東京五輪の代表選考会であるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が開催され、同20日からはラグビーW杯が始まりました。

「マラソン日本一」を決める大会と、「ラグビー世界一」を決める大会。この2つのイベントに触れて、スポーツを商品として捉える「マネタイズ」と、その競技を持続的に発展させる「サステナビリティー」について、あらためて考えさせられました。

MGCにはアンダーアーマー所属の岩出玲亜選手(24)が出場、僕もコースとなった銀座や神宮外苑のゴール地点などで応援しました。男女あわせて40人余りしか出場していない大会なのに、沿道には朝早くから応援の人々でごった返し、大変な盛り上がりでした。短距離であれ長距離であれ、「誰が一番速いのか?」というシンプルなレースはやっぱり面白い。学校の運動会でも、足の速い生徒は誰でもヒーローやヒロインでした。その頂点であるMGCは、日本のスポーツ界に新しい商品ができた瞬間のようにすら感じました。世界中から猛者が集結するラグビーW杯に比べれば、MGCは日本のローカルイベントです。でも、人々を楽しませ、興奮させるパワーはいささかも劣るものではありません。その価値を最大化するように運営すれば、MGCは大きな収益をもたらす大会になると確信しました。むしろ、そうしなければならないとも感じました。

■MGCの商品価値に注目を

つまり実態としては、注目度や面白さ、あるいは実際の集客に対して、あまりにも収益源が少なすぎるということです。同時に、42.195キロを占領するマラソン競技における「運営の手間」も観客となって初めて感じました。もう少し説明すると、沿道の集客は日本陸上競技連盟によると50万人を超えたとのことですが、40キロ以上の距離を埋め尽くす50万人の観客を安全にさばくのは並大抵の作業ではありません。一般人を巻き込まないように工夫された沿道を囲う柵、銀座の大通りをせき止め、地下道からの動線を確保する、などなど日本陸連やマラソン競技関係者が積み上げてきたノウハウのすごさを実感しました。

ただ、見方を変えると、「コスト要素」となっている沿道を埋め尽くす集客は、本来は「収益源」であるべきだということです。僕自身、海外のマラソン大会を見たことはありませんが、アルペンスキーのワールドカップを見て大いに感心した経験があります。アルペンスキーもマラソン同様、比較的長いコースをたくさんの観客が取り囲む競技です。そこでは立ち見を含めて、観戦エリアをゾーニングして、観戦費を設定していました。最新の映画を見るのに、無料でしかも早い者順に席をとる映画館など聞いたことないように、高い需要のあるスポーツイベントには応分の観戦費用が伴って当然なわけです。

のみならず、最も見やすいエリアではより大きなスペースが確保されて、一流の料理や高そうなワインを楽しめるVIPエリアが設置されていました。そこでは、ロッキングチェアでゆっくり座りながら観戦ができましたし、真冬の雪山であるにもかかわらず、ジャグジーまで設置されていました。「スポーツを楽しむとは、まさにこのことか!」と欧米人の豊かさを実感したものです。

そんなふうに、マラソンを含めて海外のスポーツイベントを研究すれば、放映権料やスポンサー料のほかにも、MGCでお金を稼ぐためのアイデアはいくらでも出てくるはずです。沿道の観戦に適した場所に有料席を設けてもいい。2階建てバスを先導車にして、そこにVIP席を設ければ、マラソン人気が高い日本ではかなり高額で売れそうです。大事なことはスポーツ競技団体側が大会を商品として自ら開発し、競技の価値を高める取り組みをすることです。MGCはその大会の商品価値の高さ、そしてマラソンという競技の価値を高める可能性を十分に示しました。

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