韓国法相辞任、「鉄板支持」層の離反が引き金に

2019/10/15 7:54
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辞任を表明した後、記者団に囲まれる曺国法相(14日、ソウル)=聯合・共同

辞任を表明した後、記者団に囲まれる曺国法相(14日、ソウル)=聯合・共同

【ソウル=恩地洋介】韓国の曺国(チョ・グク)法相が14日に辞任した。家族を巡る疑惑をはねのけ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の肝煎りである検察改革を進めようとしたが、検察の捜査網が徐々に狭まり、政権を支えてきた革新層の支持離れも招いていた。このため、2020年4月の総選挙を前に政権内に曺氏をかばう強い力も働かなかった。文大統領の政権運営は一段と厳しい局面に入る。

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曺国氏が文氏に辞意を伝えたのは、14日に特捜部縮小などの検察改革案を発表する前日の13日午後。理由は「家族のことで政権に負担をかけられない」という趣旨だったようだ。

韓国メディアは検察が曺氏の妻の逮捕状請求を検討していると報じ、15日には曺氏が出席する国会の国政監査で野党の厳しい追及を受けるのは必至だった。国政監査で疑惑について誤った証言をすれば偽証罪に問われかねず、妻の初公判も18日に迫っていた。

曺国氏の法相辞任を求めて開かれた大規模集会(3日、ソウル)=聯合・共同

曺国氏の法相辞任を求めて開かれた大規模集会(3日、ソウル)=聯合・共同

次々と浮上した娘の大学院不正入学などの疑惑をおして9月9日に法相任命を強行した文氏だったが、今回は引き留めなかった。政権に向けられる批判の声が次第に強まりつつあったからだ。ソウル中心部では今月に入り、曺氏の辞任を求める保守系団体の大規模集会が複数回開かれていた。

与党関係者によると、政権内では先週判明した世論調査や総選挙情勢の調査結果に激震が走った。報道は見送られたが、ある革新系新聞社が実施した世論調査で文氏の支持率は32%にとどまった。18年12月以降、文氏は40%台の支持を粘り強く保ってきた。30%台への急落は革新系の固い「鉄板支持」が離れ始めた兆候との見方ができる。

さらに、与党の「共に民主党」が内々に実施した総選挙の情勢調査が厳しい内容だったという。ソウルなど首都圏をはじめ、革新が伝統的に強い全羅道、文氏の地元の釜山でも与党が議席を失う結果だったようだ。これを裏付けるかのように、調査会社のリアルメーターが14日公表した政党支持率は保守系野党・自由韓国党が34%と、共に民主党の数字に約1ポイント差まで迫った。

文氏はこれまで、曺氏対検察の対決構図をつくり、コアな支持層の結束を強めようとしてきた。曺氏は退くことになったが、引き下がれない文氏は14日に「検察改革は韓国政府の最も重要な国政課題だ。最後までまい進する意思をもう一度明らかにする」と強調した。経済が下向くなか、見栄えのする改革ネタはほかに見当たらない。

14日、ソウルの大統領府で開かれた会議に出席した韓国の文在寅大統領=聯合AP

14日、ソウルの大統領府で開かれた会議に出席した韓国の文在寅大統領=聯合AP

強大な権力を持つ検察の改革に国民が一定の期待を寄せているのは確かだ。改革の成否は、信頼の置ける実力者を速やかに新法相に任命できるかどうかにかかっている。曺氏は「ポスト文」の有力者として革新系支持層の期待の星でもあった。文氏が曺氏に代わる改革の旗手に誰を起用するのか。それは来春の総選挙や次期大統領選に向けた韓国政局の行方を左右する。

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