浸水被害に負けない 栃木の事業者、ドロ処理など懸命
河川の堤防が決壊するなど台風19号で甚大な被害を受けた栃木県。浸水被害が大きかった佐野市や足利市の事業者は14日、施設の中に入り込んだドロや水を取り除く作業などに懸命に取り組んでいた。被災地を歩くと、あちこちで被害に立ち向かう姿があった。

堤防が決壊した秋山川の近くにある第一酒造(佐野市)を昼前に訪れると、ボランティアも参加して酒蔵の敷地などのドロをかき出す作業をしていた。水を含んだドロは建屋の内部にも入り込んでおり、長靴が深くめり込む厚さだ。
島田嘉紀社長は「タンク中の酒は大丈夫」と語り、事業再開に意欲をみせた。ただ再開の時期はまだ見通せない状況だ。

佐野市の名物「佐野らーめん」を提供する「麺屋ようすけ」も被災した。澄んだスープのラーメンを出す同店は行列ができる人気店だが、河川氾濫で「50センチぐらい水につかった。冷蔵庫などが被害を受けた」(田邉庸介店長)という。
14日は被災した設備などの搬出作業に取り組んだ。田邉店長は「事業再開までに2週間から1カ月はかかりそう」とみており、再開までの作業についてしっかりした口調で説明した。
一帯が冠水して一時は近づけない状態になった足利市の毛野東部工業団地では14日、立地企業が清掃や電気系統の確認をしていた。鋼材販売の板橋製作所(同市)は工場や事務所が30センチほど浸水し、一部の機械が故障。同日は工場から水をかき出した。

板橋毅社長は「今日は清掃に徹し、あした天気が良くなれば電気系統を直したい」と力強く語った。市内の経営者らが応援に駆けつけたほか、地元商工会議所の青年部からも応援の申し出があり「本当にありがたい」と前を向いた。
同工業団地の周辺では出流川の堤防が決壊したほか、尾名川も水があふれた。