米軍、シリア北部から全面撤収へ トランプ氏が指示

2019/10/14 2:21
保存
共有
印刷
その他

エスパー米国防長官はシリアのクルド人勢力がロシアに支援を求めており米軍との協力継続が難しくなったと説明した=ロイター

エスパー米国防長官はシリアのクルド人勢力がロシアに支援を求めており米軍との協力継続が難しくなったと説明した=ロイター

【ワシントン=中村亮】エスパー米国防長官は13日、CBSテレビのインタビューでトランプ大統領がシリア北部から米軍を全面撤収させるよう指示したと明らかにした。トルコの軍事作戦が想定よりも広範囲に及び、米兵の安全確保が難しくなったと判断した。北部撤収はトルコがシリア侵攻を進めやすい環境をつくることになり、シリア情勢が一段と緊迫する恐れがある。

エスパー氏によると、トランプ氏が12日夜に安全保障関連の会議を開き撤収を指示した。エスパー氏は北部駐留の約1000人について「計画的に撤収する。安全かつ迅速に実行する」と説明した。米メディアによると、部隊はトルコの攻撃を受けないようシリア北部から南下するが、シリアに駐留は続けるという。

エスパー氏はトルコ軍が当初の想定を超える地域でも軍事作戦を計画していると指摘した。トランプ政権は、トルコによるシリア攻撃の開始前にトルコ国境付近の2拠点から米兵50人をシリアの別の地域に退避させた。ただトルコの軍事作戦が広範囲に及ぶため、シリア北部に駐留する部隊全体に退避を命じることになった。

トルコがテロ組織とみなし軍事作戦の標的とするシリアのクルド人主体の武装勢力「シリア民主軍(SDF)」による反撃が激しくなることも撤収の理由にあげた。エスパー氏はSDFがトルコに対抗するためロシアやシリアのアサド政権の支援を近く取り付けると明らかにした。

SDFは過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅作戦で米軍と協力してきた。米軍を後ろ盾としてトルコからの攻撃を抑止する意味合いもあった。だがトランプ氏がトルコによる攻撃を事実上容認する立場に転じ、SDFは新たな協力相手を見つける必要がある。ロシアやアサド政権軍の支援を得られればトルコに徹底抗戦する構えだ。

シリア北部からの米軍撤収によって、トルコは偶発的に米軍を攻撃するリスクが大きく下がり、シリア北部の広範囲で軍事作戦ができるようになる。トランプ政権はトルコの進軍を認めていないと主張するが、北部撤収で戦闘がさらに激しくなる恐れがある。戦闘激化の隙を突いてISが復活する可能性もある。

SDFがトランプ政権は協力関係を破棄したとの思いを強めるのは確実だ。トランプ氏は13日、トルコとクルド人勢力が長年にわたって戦闘を繰り広げてきたと指摘し「やらせたらいい」とツイッターに書き込んだ。「トルコ国境の激しい戦闘に関わらないことはとても賢い」と強調し、シリア北部からの米軍撤収を正当化した。SDFを突然突き放した判断は、米国に対する同盟国の信頼を失墜させる恐れもある。

トランプ氏は2020年の大統領選に向けて、シリアからの米兵帰還を目指してきた。トルコによるシリア進軍をきっかけに安全確保を理由として米兵帰還の可能性も探っているとみられる。「米国第一」の政策方針に基づいて、米軍の海外駐留経費を削って米国民にとって恩恵が分かりやすい分野に資金を回したい考えだ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]