河川氾濫の栃木、産業に爪痕 台風19号で
12日に本州を襲った台風19号で河川の氾濫が相次いだ栃木県では幅広い産業に被害が出た。秋山川の堤防が決壊した佐野市では製造業や農業に爪痕が残り、足利市では産業団地や観光施設が冠水した。鉄道など交通網の寸断の影響も県内の広範囲にわたり、関係者は復旧を急いでいる。
秋山川の近くに酒蔵を構える第一酒造(佐野市)は設備が水につかり「製造再開までにどれだけかかるか分からない」(島田嘉紀社長)という。同社は1673年創業で日本酒「開華」を製造し、歴史ある建物を持つ。島田社長は「蔵の中が50センチぐらい水につかった。すでに水は引いたが、泥を外に出さないといけない」と途方に暮れる。

自動車関連企業などが立地する足利市の毛野東部工業団地は全体が冠水し、近寄れない状況だとの情報が県に寄せられた。栃木市にある滝沢ハムでも工場が浸水及び停電し、13日は泥の搬出作業に追われた。「機械の動作が確認できれば、14日から稼働させる予定だ」(同社)という。
観光業では足利市のあしかがフラワーパークで施設が水につかった。営業再開は16日以降となり「早期の復旧を目指す」(早川公一郎・足利フラワーリゾート社長)としている。塩原温泉(那須塩原市)では源泉を通すパイプが流出し、一部旅館への温泉供給が停止した。
農業への影響も大きい。県によると浸水があった佐野・足利両市で稲刈りが終了しているのは全体の3割程度。残りの収穫がどの程度可能になるかは、稲がつかった水の汚れ方次第だという。イチゴの圃場なども被害を受けている。
鉄道ではJR両毛線の大平下駅(栃木市)~栃木駅(同)間で永野川にかかる線路が壊れ、復旧の見通しが立っていない。JR日光線では線路内の砕石が大雨により流出。14日の8時30分ごろまで運転を見合わせる。
東武鉄道は砕石流出などにより、佐野線の全線や日光線の新鹿沼駅(鹿沼市)~下今市駅(日光市)間などで終日運転を見合わせる。これらの区間の復旧には「相当日数かかる見込み」(同社)だという。
被害を受け、県内地銀は緊急の相談窓口を設ける。足利銀行、栃木銀行ともに14日からローンセンターやローンプラザで、15日からは支店や出張所でも融資や通帳の紛失などの相談ができる。