米中貿易、景気懸念で一時休戦、構造問題先送り

貿易摩擦
2019/10/12 20:19
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11日、ホワイトハウスで習近平中国国家主席からの手紙を披露するトランプ米大統領=ロイター

11日、ホワイトハウスで習近平中国国家主席からの手紙を披露するトランプ米大統領=ロイター

【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中両国は中国が米国産農産品の輸入を拡大する一方、米国が制裁関税の引き上げを見送ることで合意した。関税合戦の悪化は回避したが、実態は農業や通貨など切りやすいカードだけを切った「小粒合意」だ。中国の産業補助金の見直しなど構造問題は棚上げしたままで、制裁関税を完全撤廃する貿易戦争の終結はみえない。

「中国による農畜産品の購入は過去最大だ。米国の農家はすぐに大きなトラクターを手に入れた方がいいぞ」。トランプ米大統領は11日、中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表らをホワイトハウスに招き、口早に合意内容を記者団に説明した。

舞い上がるトランプ氏と対照的に中国は非常に冷静だ。中国側の声明は「農業などで実質的な進展があった」としただけで「合意」の表現はない。国営テレビの昼のニュース番組でも3番手の扱いにとどまった。中国には昨年5月に制裁回避で合意しながら、すぐにトランプ氏がちゃぶ台返しをした苦い記憶が残る。

米国は中国が400億~500億ドル分の米農産品を購入すると明らかにした。これは過去最高だった12年(260億ドル)を5~9割も上回る。

中国の報復関税の影響で、農産品の対中輸出は18年に90億ドル程度まで急減していた。穀物産地はトランプ氏の支持基盤である激戦州の中西部が多い。米国側が主張する400億~500億ドルの対中輸出が実現すれば、苦境に立たされている米農家が受ける恩恵は大きい。

中国も豚肉などが高騰し、庶民の不満がくすぶる。習指導部にも安い米国の農畜産品の輸入拡大は渡りに船だ。もっとも中国がこれだけの規模の米農産品を買い付けるのかどうかは不透明な面も残る。

通貨政策も米中双方の利害が一致しやすい分野だった。トランプ政権は8月、中国を追加制裁に道を開く「為替操作国」に指定し、人民元安を批判してきた。今回の交渉で中国は為替介入の実績など通貨政策の透明化を米国に提案し、米財務省は「為替操作国」の指定解除の検討に入った。

両国の部分合意を演出したのは、景気失速への懸念という共通項だ。米国は製造業の景況感指数が10年ぶりの水準に悪化した。設備投資も輸出もマイナス基調が続く。

一方の中国も貿易戦争の長期化で、7~9月期の成長率は6%割れもささやかれる。これ以上の経済への打撃を避けようと米中が歩み寄れたのは一定の成果ともいえる。

もっとも中国のハイテク産業への産業補助金など構造問題は素通りした。米国が狙う本丸は、先端産業を育てて米国を追い越そうとする「中国製造2025」政策を潰すことにあった。

トランプ氏は「今回の第1段階が終われば、すぐに第2、第3段階に取りかかる」と、構造問題に切り込む考えを強調する。ペンス副大統領ら対中強硬派も部分合意に不満を隠さない。

中国は「(国家の)原則にかかわる問題は決して取引しない」(人民日報)との立場を堅持する。産業補助金や国有企業での譲歩には慎重で、今後の交渉は難航必至だ。

中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置についても合意を先送りした。トランプ氏は「貿易戦争の終結は間近だ」とするが、米中問題は世界経済の最大のリスクであり続ける。

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