列島に牙むく豪雨と暴風 台風19号、河川氾濫相次ぐ
最強クラスの台風が列島に牙をむいた。12日、東日本を直撃した台風19号。降り続く大雨に各地の河川で氾濫が発生、暴風も吹き荒れた。住民らは不安を抱えながらニュースに耳を傾け、避難所に急いだ。気象庁は首都圏の広範囲で初となる大雨特別警報を出し、最大限の警戒を呼び掛けた。

大雨のため12日午後から各地で相次いで河川があふれ出した。静岡県菊川市の牛渕川や長野県の千曲川が氾濫したほか、埼玉県東松山市の荒川水系の都幾川でも12日夜に氾濫が起きた。

東松山市で飲食店を営む戸沢義明さん(49)は「すぐに避難できるように自宅前に車を用意し、水没しないよう電化製品や調理器具は高いところに移動した。高齢の両親にも避難の準備をしてもらっている」と話した。
埼玉県熊谷市で、荒川から徒歩5分ほどの場所で動物病院を営む上林一根さん(52)は、氾濫を心配してライブカメラの映像を見続け「これほどの状況は見たことがない」とうめいた。ただ病院には7匹の犬や猫が入院しており「少しでも氾濫したら家族は避難してもらうが、自分は動物とともに2階に残るかもしれない」と悩んだ。
三重県伊勢市楠部町では茶色く濁った水があふれ、1階部分がほぼ水に漬かった住宅もあった。12日昼すぎには地元消防が4人をボートで救助。近くの小学校の50代女性職員は「児童も住んでいる地域なので心配だ」と不安げだった。
24時間雨量が900ミリを超え、観測史上最多を記録した神奈川県箱根町では町内を流れる早川が12日午前、氾濫危険水位に達した。川沿いのあるホテルでは5人ほどの宿泊客に外出を控え、特に川の周辺には近づかないよう呼びかけた。30代の男性従業員は「見たことがないほど川が激しく流れ、ごうごうという音もした」と声を震わせた。
1カ月前の台風15号で被害が出た千葉県南房総市は11日午後から市内に避難所を14カ所開設したが、12日になってさらに増設し、計22カ所とした。それでも同日夕方までに約半分の10カ所が「満員」になった。
同市の富浦小学校では午前6時時点で20人だった避難者が午後3時までに293人に。学校の教室に入りきれなくなり、近隣の地区の避難所に移ってもらったり、新たに避難所を追加開設するなどの対応に追われた。