JDI、背水の1カ月 得られるか追加支援

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
2019/10/15 2:00
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経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が瀬戸際の1カ月を迎えている。スマートフォン液晶パネルの苦戦で債務超過に陥るなか、9月に中国ファンドから支援を見送ると通告され、再建案は事実上の白紙に戻った。9月27日付で就任した菊岡稔社長がめざす11月末までの500億円の確保に向けて、まずは10月中に新たな支援契約が求められる。

■最大出資者離脱、支援枠組みが崩壊

JDIの菊岡稔社長兼CEO

JDIの菊岡稔社長兼CEO

今回の混乱の発端は9月26日、800億円の金融支援を予定していた企業連合「Suwaインベストメントホールディングス」から、最大出資者で中国ファンドの嘉実基金管理グループが離脱する意向を通知してきたことだ。600億円以上を負担する予定だった嘉実基金の離脱で支援の枠組みは事実上崩壊し、JDIは枠組みの立て直しを迫られている。

Suwaは台湾出身の金融マン、ウィンストン・リー氏がJDI支援のため立ち上げ、かつてJDIの台湾子会社でトップを務めた許庭禎氏が合流している。JDI支援に参加する投資家のまとめ役を担ってきた。ただ6月に台湾2社が枠組みを離脱。新たに香港ファンドのオアシス・マネジメントが加わったが、実態は嘉実基金の主導色が強まっていた。

嘉実基金が離脱の理由に挙げるのが、ガバナンスに対する考え方の不一致だ。嘉実基金はJDIに取締役の過半数を送り込み、経営を掌握する意向を示したようだ。一方、交渉のまとめ役として影響力を保持したいSuwaは、新たなスポンサーが入れる余地を残そうとした。JDIはこうした主導権争いのなか当事者能力を発揮できず、嘉実基金の離脱を招いた。

■10月中の500億円確保を確実に

JDIは8~9月に筆頭株主で官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)から400億円の追加融資を得ている。関係者によれば、当初は支援完了までのつなぎ融資を予定していたが、JDIの資金繰りを懸念した嘉実基金の要請で真水の支援に切り替わった経緯がある。嘉実基金が離脱した今も融資は続いているため、資金繰りの支えにはなりそうだ。

JDIは当初予定していた800億円の確保をいったん保留し、まずは当初計画では10月中を予定していた500億円の確保を確実にする姿勢だ。「まずは当面の資金繰りへの不安感を解消したい」(菊岡社長)。実現すればINCJが持つ既存債権を優先株に切り替える支援が実施される予定で、年内に債務超過を解消する道筋が見えてくる。

■再建へ3つのシナリオ

500億円の確保に向けて、JDIに残された手立てとしては、(1)嘉実基金がSuwaに出資する当初枠組みで再交渉(2)Suwaが嘉実基金以外の新たな出資者を募る(3)JDIが独自に500億円を確保する――という3つのシナリオが考えられる。JDIは9月末、(1)を前提に臨時株主総会を開いたが、離脱を通知した嘉実基金を引き戻す交渉は難航しそうだ。

そこで(2)、(3)が有力なシナリオになるが、枠組みを変更するには支援受け入れを決める臨時株主総会を開き直す必要がある。招集通知を送る手続きなどを考えれば、契約締結は10月中をめどに済ませる必要がある。顧客のアップルは1億ドル(約107億円)を予定していた支援を倍増させる意向を示しており、JDIは500億円の確保に向けて複数の候補と交渉している。

追加の支援先確保以外にも不安要素は残っている。オアシスはJDIが総額で600億円を調達することを出資の条件としている。JDIが目指す500億円では100億円足りない。菊岡氏は「改めて(条件を変更した上で出資するという)確約をもらえるようにオアシスと交渉する」と話しており、実際に資金を得られるかは、今後の交渉次第と言えそうだ。

■アップルのスマホ増産が救いに

JDIを取り巻く環境は厳しいが、足元ではわずかに光明が見えてきている。米アップルはJDIの液晶を使った「iPhone11」の増産に踏み切る方針。さらに来春にも液晶パネルを使った廉価版iPhoneの投入が見込まれ、JDIのパネル供給が期待される。JDIは1200人以上の人員削減などで固定費を削減し、20年3月期の下半期での黒字化をめざす。

ただ、アップルが新機種で有機ELパネルを全面採用すると見込まれている20年秋以降の業績は不透明で、JDIは自前の有機ELパネルやセンサーなど液晶に代わる収益源を確保していく必要がある。支援枠組みの立て直しにてこずればこうした再建シナリオ自体が画餅に帰す。就任から間もなく、菊岡社長の手腕が試される1カ月となる。

(企業報道部 龍元秀明)

[日経産業新聞 2019年10月14日付]

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