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エチオピア首相、隣国と国交回復 ノーベル平和賞

【カイロ=飛田雅則】ノーベル平和賞に決まったエチオピアのアビー・アハメド首相(43)は2018年4月の就任以来、長年対立が続く国内の民族間の和解や、隣国エリトリアとの国交回復に取り組んだ。反発する勢力から命の危険にさらされながら、平和構築を進めた取り組みが評価された。今回の授賞は、改革への歩みを逆戻りさせないための側面支援になりそうだ。

「アフリカ、エチオピアへの授与だ」。アビー氏は11日、ノーベル賞委員会との電話で喜びを語った。現地では地元テレビが「全世界がエチオピアで起きていることに注目し、改革が歓迎されている」などと報じ、歓迎ムードに包まれた。

「愛情や結束で、対立を乗り越える社会が必要だ」。アビー氏は就任後から国民にこう語りかけてきた。エチオピアは80の民族を抱えるモザイク国家で、民族間の衝突もたびたび起きていた。前政権の権力乱用や汚職で広がった混乱を収拾するため、アビー氏は矢継ぎ早の改革で国内の和解を進めた。

アビー氏は前政権が投獄した政治犯を次々と解放し、海外に逃れた反政府活動家の帰国を許した。一方、不当な拘束や拷問を執行した疑惑のある人物を逮捕した。

改革は外交にも及ぶ。アビー氏は18年7月、長年対立してきた隣国エリトリアを電撃訪問し「愛情をもって両国にある壁を壊し、橋を架ける」と呼びかけた。1993年にエチオピアから分離独立したエリトリアとは、国境線の画定を巡り98年から武力衝突が続き、推定10万人が犠牲となった。アビー氏はエリトリアと紛争を正式に終結し、国交を回復させた。

10年未満の政治家人生で閣僚経験は科学技術相のみというアビー氏が改革を実現した源には、自身のバックグラウンドがある。イスラム教徒の父、キリスト教徒の母を持つ。同国の最大民族オロモ出身ながら、他民族の複数言語を自在に操る。

10代半ばで当時の軍事共産政権を打倒するゲリラに身をささげ、同じ国民同士がいがみ合う悲惨な現場を多く目にした。2010年の政界転身前まで、情報部門を中心に軍でキャリアを積んだ。こうした多様な経験が国内外での融和を働きかける動機になったようだ。

アフリカ大陸では周辺国との紛争、民族の対立など問題を抱える国は多い。ノーベル賞委員会はアビー氏の取り組みが大陸に平和をもたらすモデルになると評価した。

一方、現地では「アビー氏は性急過ぎる」との声もある。6月に軍参謀総長や州知事が治安機関の反乱分子らに殺害されるクーデター未遂事件が起きた。昨年にアビー氏が出席した集会で爆発事件が発生するなど反発は根強い。民族間の争いや土地や資源を巡る対立も続き、多民族国家の統治の難しさが改めて浮き彫りとなった。

エチオピアでは20年に総選挙が予定されている。アビー氏は複数政党による民主主義の進展を目指す。若き指導者が進める改革は、アフリカの民主主義や平和の行方を占う試金石となる。

アビー氏は8月下旬、アフリカ開発会議(TICAD)のため来日した。日本はエチオピアの主要産業である農業の生産向上で協力を約束した。

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2021年のノーベル賞発表は10月4日の生理学・医学賞からスタート。5日に物理学賞、6日に化学賞、7日に文学賞、8日に平和賞、11日に経済学賞と続きます。

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