マハティール財政改革、曲がり角 20年予算案
赤字削減目標は未達

2019/10/11 18:00
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【シンガポール=中野貴司】マレーシアのマハティール政権の財政再建が曲がり角を迎えている。11日に発表した2020年の予算案は、景気を刺激する目的で追加の公共投資を盛り込んだ結果、財政赤字の削減目標を達成できなかった。石油関連収入に依存する構造も続き、財政健全化への道は険しい。

マハティール政権の優先課題だった歳出削減はなし崩しになっている=AP

リム・グアンエン財務相は11日、20年の歳出総額が2970億リンギ(約7兆7千億円)になると発表した。19年予算では未払いの税還付金などのナジブ前政権の負の遺産解消に巨額の費用を計上しており、その特殊要因を除くと19年比で約6.5%の増加となる。

歳出増の要因は世界的な景気減速に備え、公共投資を積み増したことだ。ボルネオ島の高速道路や首都クアラルンプール周辺の鉄道建設を加速し、雇用や幅広い産業への波及効果を狙う。

マハティール政権は18年5月の政権交代当初、1兆リンギを超える国の債務の削減を最優先課題の一つと位置づけた。歳出削減策の目玉としてシンガポールとの間を結ぶ高速鉄道や、中国と着工した東海岸鉄道の建設計画の中止を相次ぎ発表した。

ただこのインフラ投資の見直しは大幅に軌道修正した。19年4月に東海岸鉄道の建設を費用を圧縮したうえで再開することを決めたほか、今回の予算案ではそれ以外のインフラ案件への投資も前倒しした。17年7~9月期の6.2%を直近のピークに経済成長率が低下傾向にあり、雇用への影響も無視できなかった。

一方、歳入は国営石油会社ペトロナスの特別配当がなくなったことで、19年比7.1%減の2445億リンギ。国内総生産(GDP)比の財政赤字は3.2%で、目標の3%を達成できなかった。

マハティール氏は18年6月に廃止した消費税について「国民が望むなら再導入を検討する」と3日発言した。その後すぐ撤回したが、代替財源として導入した売上・サービス税は消費税ほどの税収を確保できていない。

20年予算案でもペトロナスの通常配当など石油関連の歳入が全体の20.7%を占める見通し。ナジブ前政権は石油関連収入への依存脱却を目指し、歳入に占める割合は16年に15%未満に減ったが、再び上昇した。

マハティール政権は11日、20~22年平均のGDP比の財政赤字の割合を2.8%に引き下げる計画を示した。財政赤字縮小への道筋を早期につけたい考えだが、計画達成には21年から財政赤字の割合を2%台に下げる必要がある。

マレーシアは手厚い税制優遇措置によって、1500万人の労働者のうち16.5%しか所得税を支払っていない。徴税対象の拡大など痛みを伴う改革にも切り込まないと、財政再建は難しい。

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