中国の対外投資、岐路に 欧州向け64%減
技術流出に各国警戒 「一帯一路」でも減少

貿易摩擦
2019/10/11 17:19
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【北京=原田逸策】中国の先進国向けの直接投資が急減している。2018年は欧州諸国やオーストラリア向けが大幅に減り、全体でも前年比10%減の1430億ドル(約15兆円)と2年連続で前年水準を下回った。中国への技術流出の警戒が高まり、各国が投資を制限したからだ。広域経済圏構想「一帯一路」沿線国向けの投資も減っており、米中貿易戦争を受けた中国の対外投資は岐路に立っている。

商務省や国家外貨管理局がまとめた「対外直接投資統計」でわかった。金融機関に対する投資も含む。投資分野別では金融が前年比16%増の217億ドルに増えたが、金融以外は同13%減の1213億ドルに減った。

投資額は14年以来の低さ。民間企業による野放図な投資で16年は1961億ドルと過去最高だったが、当局が不動産や娯楽産業への投資を制限して17年から減少に転じた。中国企業によるM&A(合併・買収)は同38%減の742億ドル(対外直接投資に含まれない部分を含む)に落ちこんだ。

地域別では欧州向けの投資が前年比64%減の65億ドルに急減した。17年のスイス企業への大型M&Aの反動減だけが理由ではない。ドイツ、英国はいずれも半減し、フランスは投資回収が新規投資を上回った。豪州も同53%減の19億ドルに急減した。日本や米国をふくむ主要7カ国(G7)向けの投資額は、16年の計261億ドルから2年連続で減り、18年は計122億ドルまで落ちこんだ。

背景に投資制限がある。トランプ米政権は17年から中国企業による米企業買収への審査を強め、中国による対米投資は17年に前年比62%も減った。18年はこの流れが欧州に波及した。ドイツは18年夏に中国系企業によるドイツの精密機械メーカーの買収を事実上阻止し、フランスも18年2月に中国系企業が筆頭株主の空港を巡って政府保有株の追加売却を見送った。

先進国による中国締め出しに、中国は独自経済圏「一帯一路」向け投資で対抗するはずが、思惑通りに進んでいない。

一帯一路の沿線64カ国向け投資は18年に前年比11%減の178億ドルと2年ぶりに減り、対外投資全体に占める比率もやや落ちた。金融分野の投資が大幅に減っている。

「相手国を借金漬けにし、その代償に港湾などのインフラ施設を取りあげる」という「債務のワナ」への批判を意識し、中国が過剰投資にブレーキをかけた可能性がある。習近平(シー・ジンピン)国家主席も19年4月の一帯一路首脳会議で「(相手国の)財政の持続可能性を確保する」と演説していた。

欧米で批判が高まる契機となった米シンクタンクのリポートが「債務のワナ」に陥るリスクがある国として挙げたパキスタン、タジキスタン、モルディブなど8カ国向けの投資額は前年比55%減の10億ドルに急減した。モンゴル、パキスタン、モルディブ、ジブチでは投資回収が新規投資を上回った。

米国による追加関税を避けようと、代替生産地を探す動きもある。ベトナムは前年比51%増の11億ドル、バングラデシュは5.5倍の5億ドル、メキシコは2.2倍の3億ドルにそれぞれ急増した。人件費高騰で中国企業は工場の海外移転を進めてきたが、貿易戦争で加速した。技術流出への懸念が欧米ほど強くない韓国やイスラエル向けの投資も大幅に増えた。

中国と伝統的に友好関係があるアフリカ諸国への投資も前年比31%増の53億ドルに増えた。コンゴ民主共和国、ザンビア、モザンビーク、南アフリカなどは投資額や伸び率がいずれも大きい。鉱物など資源確保だけではなく、将来の成長市場としてアフリカを位置づけている可能性がある。

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