南太平洋、中国が侵食 防戦の米国は軍事拠点化を警戒

米中衝突
2019/10/10 21:00
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米トランプ政権と中国の習政権は南太平洋で主導権争いを繰り広げている=ロイター

米トランプ政権と中国の習政権は南太平洋で主導権争いを繰り広げている=ロイター

 【ワシントン=永沢毅、北京=羽田野主】南太平洋を舞台に米国と中国の主導権争いが激しさを増している。中国が経済支援をテコに、島しょ国2カ国との国交を相次ぎ樹立し、台湾との断交につなげた。米国は中国による新たな軍事拠点の建設を警戒しながらも対応が後手に回っているのが実情。太平洋での米軍の優位が揺らぐ懸念が強まってきた。
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中国共産党の機関紙の人民日報は10日付で、訪中したソロモン諸島のソガバレ首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席が、にこやかに握手する写真を1面に大きく掲載した。ソロモンは9月に台湾と断交し、中国と国交を結んだばかり。習氏は北京で9日開いた会談で、ソロモンへの経済支援を表明し「中国と太平洋諸島が協力し合う『大家庭』にソロモンも加わってくれることを歓迎する」と話したという。

中国の動きで危機感を強める米国と台湾も動く。台湾の外交部(外務省)と、米国の対台湾窓口機関である米国在台協会は7日、台湾と外交関係を持つ南太平洋の4つの島しょ国への援助について協議する「太平洋対話」を台北で開いた。

「台湾と島しょ国の外交関係を支持する」。米国務省のオードカーク次官補代理はこう発言し、名指しを避けつつ、南太平洋での中国の影響力の広がりにクギを刺した。

太平洋対話は今回が初めての開催。台湾と外交関係を持つナウルやツバル、マーシャル諸島の駐台湾「大使」らが出席した。今春から調整を進めてきた米国は、台湾との外交関係の維持を働きかけてきたが、開催が迫った9月にキリバスとソロモン諸島が台湾との断交を相次いで決めた。中国との接近を食い止められず、米国はメンツを潰された形となった。

今年に入り、米国は中国の「一帯一路」への対抗策である「インド太平洋戦略」の一環で、南太平洋の島しょ国への関与を強めつつあった。8月にはポンペオ国務長官が現職としては初めてミクロネシアを訪れ、マーシャル諸島、パラオを含む3カ国の首脳と会談した。災害支援などを含め経済・防衛協力の強化を確認した。国防総省も6月にまとめたインド太平洋戦略の報告書で、島しょ国との連携強化を柱の一つに据えて「各国との関係を再活性化させる」と打ち出したばかりだった。ただ、ソロモンやキリバスの動きはこの地域での米国の影響力低下を印象づけた。

米国が警戒を強める理由は、南太平洋に中国が本格的な軍事進出をうかがっているためだ。「軍隊の建設や防御能力の向上を助ける」。7月に中国が発表した国防白書には、南太平洋の島しょ国と軍事交流を進める方針を明記した。

オーストラリアの北東に位置するソロモンは、米国と豪州を結ぶシーレーン(海上交通路)の要衝に位置する。キリバスの東端にあるクリスマス島は米インド太平洋軍が本拠を置くハワイの南方にある。ソロモンとキリバスでは中国の援助による軍港の建設が取り沙汰されている。両国との軍事的な連携が進めば、中国本土から遠く離れた南太平洋で、中国人民解放軍の警戒監視や戦力投射能力が飛躍的に高まり、米軍の行動に制約を受けかねない。

南太平洋で台湾はなおツバルとパラオ、マーシャル、ナウルの4カ国と外交関係があるが、盤石とは言いがたい。「インフラ整備や開発で中国に比重を置くときだ」。現地メディアによると、パラオ議会では20年までに中国と国交を結ぶべきだとの意見が公然と語られているという。

中国は17年からパラオへの観光ツアーを禁じ、圧力を強めている。米国はパラオへの財政支援と引き換えに有事の際に米軍が土地を使える盟約を結んでいるだけに、台湾と断交した場合の影響は大きい。これらの島国の動向が太平洋での米中のパワーバランスを左右しつつある。

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