国際企業課税の対象は? OECD新ルール案
「売上高880億円以上」「利益率10%超」「消費者が顧客」

経済
2019/10/10 23:00
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経済のデジタル化に対応した国際課税の新ルールをめぐり、各国は具体的な枠組みの調整に入る。対象は世界での連結の売上高が7億5千万ユーロ(約880億円)を上回る企業とし、利益率でみて10%を超えた部分を各国に配る税収の原資にすることを軸に検討する。利益率10%超の高収益企業は限られ、世界的な法人税収の移転は小規模にとどまる可能性もある。大幅な税収増を求める新興国が容認するかは流動的で、最終決着は曲折が予想される。

経済協力開発機構(OECD)は新枠組み案を9日に公表した。17日から米国で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告する。2020年1月の大筋合意に向け、各国は詰めの議論に入る。

それぞれの国に工場や支店を持たなくても、各国の消費者から収益を稼げるIT(情報技術)企業などにいかに税金を納めさせるかがデジタル課税の焦点だ。新案は「GAFA」と呼ばれる米巨大IT企業などが世界中で稼ぐ利益を各国に分配する仕組みを示した。

まずグローバル企業の利益を切り分ける。拠点の固定資産などからあがる一般的な利益(通常利益)を除いた部分を、ブランド力や知名度といった「無形資産」で全世界の消費者から稼いだ利益(超過利益)だとみる。

OECDは連結の売上高が約880億円を下回る中堅・中小企業を対象から外す方針だ。ポイントはさらに対象を絞り込む具体的な線引きの基準。関係者によれば、利益率が10%超の企業を対象とする方向で検討が進むという。10%までを通常利益とみて、従来通りに工場や支店などの拠点を置く国に課税権を持たせる。10%超の部分は超過利益として各国に配分する税収の原資とする。各国での売上高の割合に基づいて配分する。

利益率は企業の連結決算書をもとに独自の算出方法を模索する。本業で稼いだ利益をさす営業利益に基づいた概念に近くなるとみられる。

「10%ルール」を企業に単純適用するとどうなるか。売上高に対する利益率が30%程度のフェイスブック、20%強のアルファベット(グーグル)は対象となる可能性が高い。ネット通販がメインのアマゾン・ドット・コム(約5%)は対象から外れる可能性がある。

さらに新ルールの対象となる業種・事業は「消費者を相手にしたビジネス」に絞る。例えば、ナイキやファーストリテイリング(ユニクロ)のように、世界中の消費者に製品を販売している企業が典型だ。オンライン広告のように資金は企業間で流れるが、消費者ビジネスの要素を含む企業も対象。鉄鋼や素材などの中間財取引や金融、農産物は対象から外れる。

ここでも線引きがポイントになる。例えば、日立製作所など鉄道を輸出する日本企業では、取引の相手は企業や政府だが、最終的に電車に乗るのは消費者だ。家庭用テレビゲーム機の利用者を世界中に持つソニーも対象になり得る。「ほとんどの日本企業は対象外」(経団連)との声もあるが、どんなビジネスが新ルールの対象になるのか各国と産業界で駆け引きが起きそうだ。

OECDの新案は法人税収の激変を避けたい主要国に寄った案といえる。OECDの担当者は9日の記者会見で、新案の効果について、グローバル企業が低い税率の国に計上していた収益が分散されるため、他の国の税収増につながるとした。そのうえで「実際の税収面の変化は穏やかになる」とも指摘した。

一方、インドなど一部の新興国は「グローバル企業の利益すべてを再配分の対象とすべきだ」と主張してきた。最終合意には、議論に参加する134カ国・地域の結束が不可欠だ。新ルールを機能させるには、多国間の租税条約も必要になる。一橋大の吉村政穂教授は「新ルールでは途上国の実入りはわずかだろう。これに反発して独自の課税に走る国が増えれば、国際的な枠組みが瓦解する」と指摘している。

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