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選手の気持ちを前向きに 異色のサポート役

Tokyo2020
2019/10/10 17:27
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数センチ、コンマ数秒の世界に生きるトップアスリートたち。日々のトレーニングで培った肉体や技量を試合本番で発揮できるかは、心理面によるところも大きい。4年に1度しかない五輪・パラリンピックのような舞台ならなおさらだ。ポジティブなメンタルづくりをサポートする異色のエキスパートがいる。

士気高めるストーリー
 モチベーションビデオ制作 永尾雄一さん

引き込まれる映像とBGM、そして心に訴えかけてくるメッセージ。試合前の士気や一体感を高めるモチベーションビデオ(MV)が、スポーツの現場で使われることが増えた。永尾雄一さん(40)はMVが与える効力をテーマに博士論文も書いた、この世界で知る人ぞ知る存在だ。

モチベーションビデオ制作では「ストーリー性を大切にしている」と永尾さん

モチベーションビデオ制作では「ストーリー性を大切にしている」と永尾さん

「最初に作り始めたのは大学のサッカー部にいたとき。当時はMVという言葉もなく、『動機づけビデオ』と勝手に名付けていた」。愛知の高校時代にスポーツ心理学に興味を持ち、鹿屋体育大に進学。修士課程まで進み、九州大で博士号を取得した。以来、MV制作をライフワークとしてきた。「日本に一人くらい、こんなやつがいてもいいんじゃないかと」

現在は国立スポーツ科学センター(JISS)で働く傍ら、日本テニス協会の情報戦略スタッフとして活動。10年近く男子代表チームや選手にMVを制作提供している。

「MVはパフォーマンス向上に役立つためのもの。思い出ビデオや好プレー集とは違う」と永尾さん。大切にするのはストーリー性だ。例えば、国別対抗戦のデビス杯ワールドグループ残留を懸けた試合前は、過去の映像を流しながら伝統を守る意義を訴えた。格上相手との対戦では他競技の日本代表が金星をつかんだ映像で鼓舞した。

制作にあたっては、まず監督に選手へ伝えたいことを聞く。テーマが定まると、それに合った素材を探していく。普段から「使えそう」な映像や音楽はストックし、自らドローンを飛ばして撮影もするとか。何度も曲を聴きながら、入れる映像や文字を考えていく。

そうやって「絵コンテ」が出来上がって、初めてパソコンを開いて編集にとりかかる。完成まで約1カ月。編集は「3日くらいで一気に」というから、ほとんどは絵コンテ作業に費やされる。プロの映像編集技術はない分、ストーリーが勝負だと考えているからだ。

「すごくよかった。あした頑張る」。そんな選手の言葉を聞くと、役に立てたと実感する。すでに東京五輪用も考え始めているそうだ。「自国開催だからこういう素材かなとか。勝手にイメージを膨らませて、勝手に盛り上がっています」

自己肯定高めるメーク
 アスリートビューティーアドバイザー 花田真寿美さん

スポーツ選手におしゃれは無用――。そんな風潮が変わってきた。「アスリートビューティーアドバイザー」の肩書で活動する花田真寿美さん(32)は、アスリートに対するメークの出張サービスや研修セミナーを行っている。空手やホッケーの日本代表、パラ競技の選手らをサポートしてきた。

パラ柔道の選手にメーク指導する花田さん=NOSTY/真板由起氏提供

パラ柔道の選手にメーク指導する花田さん=NOSTY/真板由起氏提供

「メークは武器になります」と花田さんは言う。空手選手の場合は「目力や気の強さを引き立たせることができる」。採点で争う形の演武は、審判の印象に残る「見た目」が重要だ。

ホッケーの女子選手には、試合中に汗をかいても崩れないメークを指南する。こちらも見た目が理由だが、目的は空手とはちょっと違う。

「選手たちは試合直後に取材を受けることもある。『メークをしていると、自然と堂々とできて話す内容まで変わってきた』と喜ばれる」。競技力もさることながら、選手が好印象を持たれることは子供たちへの競技普及やスポンサー獲得にも寄与することになる。

花田さんが起業したのは3年前。「何の意味があるの?」「化粧なんかして負けたら、周りに何を言われるか分からない」と、当初は競技団体や実業団を回っても冷めた反応だったという。だが、最近はイベント参加や表敬訪問する選手のために出張メークの仕事の依頼が増えている。

「メークをすることで自己肯定感が増し、自信がつく。競技の邪魔になるどころか、プラスにもなる」。花田さんがこう語るのは自身の経験によるところが大きい。小学生からバドミントンに打ち込み、高校は五輪選手も輩出した強豪校に進学。ただ、そこでは意に反して「角刈り」を強制されたという。結局、「バーンアウトしてしまった」と大学2年で競技をやめた。その後、モデルとして活動したときは摂食障害にもなった。

心身とも健全であってこそ、前向きに競技に打ち込める。そんな魅力的なアスリートの力になりたいと思っている。

(山口大介)

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