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金融インフラ戦国時代へ(投信観測所)

低金利による収益力悪化や地方経済の低迷で、地方銀行は厳しい経営環境が続いている。そうした中で、証券会社と地方銀行の金融インフラに関わる提携案件が増えている。SBIホールディングスは地方銀行と共同持ち株会社をつくり、東海東京フィナンシャル・ホールディングスは有力地方銀行と共同出資で証券会社を立ち上げた。野村ホールディングス山陰合同銀行と金融商品仲介業務に関する包括提携で基本合意した。

地方銀行が証券会社と提携する目的は、多額のシステムコストの負担を減らすことが大きい。金融インフラに詳しい日本資産運用基盤グループ代表取締役社長の大原啓一氏は、「地方銀行と証券会社の包括的提携スキームの拡大により、金融インフラ機能を有する証券会社間の競争は今後ますます激化していく」と予想する(以下談)。

日本資産運用基盤グループ代表取締役社長の大原啓一氏

地方銀行の無駄が多い資産運用ビジネス

私は8年間の欧州駐在を経験し、日本の金融機関の経営には無駄が多いと実感した。例えば、日本では、地方都市の駅前に、複数の地方銀行のATMが多数あったりする。

地方銀行の投資信託の販売など資産運用ビジネスについても無駄が多く、銀行経営を圧迫している。システムや投資信託の品ぞろえ、商品選定やコンプライアンス対策など、事業を運営するためのインフラが整っていない。また、多くの地方銀行は高額な投信窓販システムを利用し、その多額のコスト負担に苦しんでいる。

米国の金融業界に、TAMP(Turnkey asset management platform )という業態がある。「スイッチを入れる(Turn key)だけで資産運用事業が開始できる」よう全ての事業サポートを行う基盤である。日本の金融機関の資産運用ビジネスにもそのような基盤が必要であり、当社はその役割を担うことを目指している。

地方銀行の資産運用ビジネスの現状

資産運用ビジネスは、顧客の適合性に応じた投資信託を販売するだけではない。顧客の将来の目標を達成するために最適な資産計画を策定し、最後まで目標達成に向けて計画の実行支援を行う「ゴールベース資産管理」のようなアプローチが重要だ。

現状では、地方銀行で実質的に販売している投資信託は数十本程度に限られており、金融アドバイザーとしてのサービスの前提となる最良商品方針(ベストプロダクトポリシー)の体制すら整備できていない。

ゴールベース資産管理には程遠く、金融アドバイザーとして付加価値の高いサービスを提供できる状況ではない。

野村証券と山陰合同銀行の提携の意味

野村証券と山陰合同銀行の包括的業務提携は、銀行の非効率で脆弱な事業運営を構造的に改革するものだ。金融アドバイザーにかかわる業務以外を全て野村証券に委ねることで、高額の投信窓販システムだけでなく、商品選定・管理という手間や専門的なノウハウを要する業務から解放される。そうすることで、山陰合同銀行は金融アドバイザーとしての付加価値の高いサービスの提供に集中することができる。

これまでも地方銀行とオンライン証券が提携し、金融商品仲介スキームを活用する事例はあったが、いずれも既存のシステムや業務プロセスを一部残す中途半端なスキームだった。

金融インフラ戦国時代へ

野村証券と山陰合同銀行の包括的業務提携の事例を皮切りに、今後はドミノ倒しのように同様の包括的提携スキームが他の地方銀行にも広がっていく可能性がある。

地方銀行が金融アドバイザー業務に集中し、それ以外の業務プロセスやシステムを外部委託する事業改革の案件が増えるにつれ、提携を狙った金融インフラの機能を有する証券会社間の競争がより一層激化することが予想される。金融インフラをめぐる「戦国時代」の様相が強まっている。

資産運用の対面営業は、ネットやAIで代替できない業務

ネットやAI(人工知能)を使った資産運用が注目されて、対面営業を斜陽ビジネスと考える向きもある。それは誤解であり、資産運用ビジネスの主戦場は対面営業だ。

例えば、IT(情報技術)先進国の米国においても、投資家がネット証券やAIのみで売買するケースは少なく、多くの投資家は対面営業の金融アドバイザーのサポートを受けている。金融アドバイザーは、相場が大きく動く中で、顧客に適切な情報を提供し、顧客が納得の上で長期的に合理的な投資行動をするようサポートする。これは、人間にしかできない仕事だ。

このような専門的な知識と技術を持った金融機関のアドバイザーによるヒューマンタッチなサポートが重要だ。

さらに、地元と密着した顧客との接点を持つ地方銀行の対面営業は、資産運用ビジネスで優位性があると思う。

(聞き手はQUICK資産運用研究所 清家武)

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