トルコ、親米クルド人勢力を攻撃 シリア北東部
地域情勢の不安定化 国際社会が懸念

中東・アフリカ
2019/10/9 23:13 (2019/10/10 6:30更新)
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シリア北東部ではトルコ軍の爆撃を受けて炎上する場面がみられた(9日)=AP

シリア北東部ではトルコ軍の爆撃を受けて炎上する場面がみられた(9日)=AP

【イスタンブール=木寺もも子】トルコ軍は9日、テロリストとみなすクルド人主体の武装勢力「シリア民主軍(SDF)」を排除するため、シリア北東部に侵攻した。トランプ米大統領がシリアからの米軍撤収を表明してからわずか数日後の作戦実行で、国際社会から懸念や非難が相次いだ。米国の関与が弱まったことで、地域情勢は一気に不安定になりつつある。

トルコ軍が空爆などを始めたのは、現地時間9日午後4時(日本時間同日午後10時)。その後、ロイター通信によると、9日夜(同10日未明)には地上作戦を始めた。

トルコのエルドアン大統領が名づけた軍事行動は「平和の泉作戦」。その狙いは2つある。第1に、トルコを脅かすクルド人勢力をシリア国境から遠ざけること。第2に、トルコと接するシリアの国境地帯に「安全地帯」を設け、数百万人単位のシリア難民を移住させることだ。

トルコ軍のシリアへの侵攻後、シリアとの国境近くの地域住民はトルコ軍に歓声をあげていた(9日)=AP

トルコ軍のシリアへの侵攻後、シリアとの国境近くの地域住民はトルコ軍に歓声をあげていた(9日)=AP

クルド人武装勢力はこれまで米国にとって、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討の作戦で手を組んできたパートナーだ。今回、米国は「一線を越えるようなことがあったらトルコ経済をぶち壊す」(トランプ氏)と警告していたが、エルドアン氏は耳を貸さずに軍を進撃させた。SDFの報道官によると、市街地が空爆され、死傷者が出ている。

トランプ氏はトルコの行動を「支持しない」「悪い考えだと明確にする」などとする一方で、トルコを非難することはせず、米国は関与しない方針を強調した。

一方、欧州連合(EU)は9日、トルコの軍事作戦の「一方的な中止を求める」との声明を発表した。11日にエルドアン氏と会談するストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長は「地域をさらに不安定にさせる」と懸念を表明した。

国連は英独仏など欧州5カ国が安全保障理事会の緊急会合を開くよう要請し、10日の開催が決まった。ロイターによると、エジプトもアラブ連盟の緊急会合の開催を呼びかけた。

米国内でも、トランプ氏に近い共和党のリンゼー・グラム上院議員が野党・民主党の上院議員とトルコ向け制裁法案をまとめるなど、反発が出ている。

一方、シリアのアサド政権に近いロシアのプーチン大統領は9日のエルドアン氏との電話協議で、シリア和平の進展を妨げないように「入念に状況を考慮する」よう求めた。軍事行動に明確に反対する発言は明らかになっておらず、事実上黙認したとの見方が広がっている。

トランプ氏は6日のエルドアン氏との電話協議後にトルコの軍事作戦を容認するとともに、シリアからの米軍撤収を表明した。「政策の大転換」(米紙)に与党共和党指導部が強く反発したことからトランプ氏は方針を軌道修正したものの、トルコの軍事作戦を止めることはできなかった。米国不在による「力の空白」が生まれれば、シリア情勢は一段と混迷を深める公算が大きい。

トルコ軍の攻撃対象は、SDFが掌握する国境沿いのテルアビヤド、ラス・アルアインの2つの街のもよう。トルコメディアは、当面の作戦目標は2つの街の間の約120キロの地帯だと報じている。

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