米政権、民主の分断狙う 弾劾協力、下院の採決要求

2019/10/9 19:15
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【ワシントン=中村亮】トランプ米政権は8日、野党・民主党が主導する弾劾調査に協力しないと明言した。歴代大統領に対する弾劾調査の慣例に従わない一方的な措置だと非難し、議会下院の採決で過半数の賛成を協力の条件にあげた。トランプ氏の支持率が高い地区選出の民主党議員は調査に反対する可能性があり、採決を促して民主党の分断を狙う。

8日、トランプ米大統領は民主党主導の弾劾調査を「いかさま裁判だ」と糾弾した(ワシントン)=ロイター

ホワイトハウスは8日、下院に宛てた書簡で弾劾調査について「憲法上無効だ」として政権関係者はいっさい協力しないと伝えた。トランプ氏も8日、弾劾調査を「いかさま裁判だ」と糾弾した。同氏がウクライナ政府にバイデン前副大統領の調査を要請した問題の渦中にある駐欧州連合(EU)大使ゴードン・ソンドランド氏の証言拒否は、やむを得なかったとの立場を示した。

ホワイトハウスは民主党のペロシ下院議長が声明を読み上げただけで正式な弾劾調査を始めた点を問題視した。ニクソンやクリントン両元大統領の弾劾調査の開始時には本会議で採決をとり過半数の賛成を得ていた。政府高官は大統領弾劾の決断は議会による政権監視で最も重い判断になると指摘し、手続きを進めるには議会の総意を示す必要があると強調した。

採決要求には、事実上のトランプ氏に対する信任投票を促して民主党を揺さぶる狙いがある。弾劾調査は同党のリベラル派が主導した。一方で、共和党の影響力が強い地区選出の議員の多くは中道派と位置づけられ、トランプ氏と真っ向から衝突すれば2020年の下院選で再選が危ぶまれる。

米法律事務所ディジェノバ&トェンシンのジョゼフ・ディジェノバ氏は、ペロシ氏が本会議採決を保留したのは民主党内から造反者が出て結束が乱れるのを恐れたからだと分析する。

米メディアによると、共和党が実施した世論調査では、20年の下院選で激戦が予想される地区で弾劾反対の意見が多い。16年の大統領選でトランプ氏が勝利したものの現在は民主党が下院議席を占める地区では、弾劾反対の共和党候補の支持率が54%と弾劾支持の民主党候補(38%)を大きく上回る。選挙の地盤が弱い民主党議員ほど採決で弾劾調査に賛成しにくい構図になっている。

米政権は調査の正当性を否定する戦略も進める。政府高官は、関係者の証言内容の閲覧が政権や下院少数派の共和党には制限され、文書提出や証言を強制する召喚状発出の権限も共和党に付与されていないと非難した。高官によると、過去の大統領に対する弾劾調査ではともに少数派に認められていた権限で、調査の透明性が低いと主張する根拠にしている。

トランプ氏に近い共和党のリンゼー・グラム上院議員は8日、ウクライナ疑惑の中心人物である大統領顧問弁護士ジュリアーニ元ニューヨーク市長に司法委員会での証言を要請した。下院の調査に先だって、ウクライナ疑惑を否定するジュリアーニ氏の主張を聴取し、弾劾調査は不適切だとの世論を形成する思惑が透ける。

民主党は政権に徹底抗戦の構えだ。弾劾調査を指揮する民主党のアダム・シフ下院議員は8日、ツイッターで「ホワイトハウスは自分たちの条件にそぐわないと弾劾調査に協力しないと言っている」と訴えた。合衆国憲法は議会に政権監視の役割を求めており「大統領も超法規的存在ではない」として、調査に協力する義務があると主張した。

合衆国憲法は下院に大統領弾劾の権限を付与するが、その手続きは詳細に定めていない。政権が慣例に反するとして弾劾調査を不当だと主張するが、下院には慣例に従う義務もない。下院は一方的な調査との政権の主張に世論が賛同するかを見極めながら、議会採決の可否などを検討していくとみられる。

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