グローバル企業 税収を各国配分 OECD案公表

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2019/10/9 18:48
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経済のデジタル化に対応してグローバル企業に適切な課税をするため、経済協力開発機構(OECD)は9日、新たな国際課税の枠組み案を公表した。利益のうち一部にかかる税を、その企業の国別の売上高に応じて各国で分け合う。拠点の有無にかかわらず、各国が課税できる仕組みだ。拠点ではなく消費地を起点とする法人税の仕組みの採用は、国際課税の大きな転換点となる。

OECDは11月21日からフランスで企業関係者や専門家などを集めた公聴会を開く。そのうえで議論に参加する134カ国・地域で2020年1月に大筋合意し、20年末までに詳細も含めた最終合意を目指す。

OECD案はグローバル企業からの税収を、事業展開の実態に合わせて各国で分け合うことを柱とした。各国は自国にある売上高をもとに、グローバル企業に課税できるようにする。例えばある日本企業の売上高が日本で8割、米国で2割の場合、米国は利益の2割分に課税する権利を持つ。

今のルールでは、支店や工場など「物理的拠点」がない企業に国は課税できない。ただ、IT大手などのデジタル企業は拠点を持たずに国境を越えたサービスを展開するため、大きな事業を手掛けている国でも課税されないという問題がある。

OECDは各国が課税できるのは「消費者向けの事業」からの利益とする考え方も示した。その上で、収益力の高い企業の利益はブランド力や認知度で上積みされているととらえる。上積みされた利益は国境とは関係ないため、売上高に応じて各国が分けられるという考え方だ。

上積み分の利益を正確に切り分けるのは難しいため、一定の算定率を設けて機械的にはじく。具体的にはこれから詰めるが、一般に高収益の目安とされる「利益率10%超」が候補だ。例えば利益率15%の企業は10%分が今のルールで課税され、残りに各国が課税する。

新たなルールの利点は、各国がグローバル企業へ簡単に課税できることだ。中小企業を除くすべての企業を対象とする。一方で適用は消費者向けビジネスを展開する高収益の企業に限定されるため、多くの企業は現行ルールにとどまる可能性が高い。

それでも実現に向けた課題は多い。

まずは課税対象とする利益をどう決めるかだ。例えば企業全体の税引き前利益をみると米フェイスブックは売上高の3割程度で対象になるが、5%弱の米アマゾン・ドット・コムは対象から外れる。グローバル企業は消費者向けから法人向けまで幅広い事業を手掛け、どの事業の利益をみるかで対象が変わる。

ブランドなどに基づく利益を抽出するための「利益率」も決め方が難しい。10%超とすれば対象の企業は絞られる。大幅な税収増を望むインドなど一部の新興国は「グローバル企業の利益をすべて再配分すべきだ」と主張し、隔たりは大きい。

一橋大の吉村政穂教授は「新しいルールで税収増の見込めない国が独自課税に走れば、枠組みが瓦解する」と指摘する。仮に20年に合意しても「利益率のさらなる引き下げなど、将来的な見直しが必要になる可能性がある」と話す。

国際的な税逃れの監視団体からは、途上国により税収が落ちるよう、売上高以外にも労働者数などの要素を踏まえるべきだとの意見も出ている。20年末の合意に向け、当面は予断を許さない展開が続きそうだ。

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