剣が峰の米中閣僚交渉 景気減速、迫る関税上げ
10日から2カ月半ぶり

貿易摩擦
2019/10/9 19:15
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【ワシントン=河浪武史】米中両国は10日からワシントンで2カ月半ぶりに閣僚級貿易協議を開く。関税合戦で両国の景気は減速し始めており、チキンレースの交渉は剣が峰を迎える。ただ、制裁解除は期待薄で、知的財産権の保護や投資ルールの整備といった建設的な議論も止まったままだ。米政権は15日に関税引き上げを計画しており、貿易戦争は越年との悲観論が早くも浮上する。

7月末に上海で協議したライトハイザーUSTR代表(左から2人目)と中国の劉鶴副首相(右)=ロイター

中国は劉鶴(リュウ・ハァ)副首相らがワシントン入りし、7月末に上海で開いた会合以来、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表らと閣僚級協議にのぞむ。米中両国は5月の閣僚級協議で「90%仕上がっていた合意を中国が一方的に破棄した」(ムニューシン米財務長官)と決裂。その後は実質的な議論が進んでいない。

トランプ米大統領は7日、記者団に「中国とは大きな取引をのぞんでいる」と主張した。同じ日に米政権は、中国が新疆ウイグル自治区で少数派民族を弾圧しているとして、監視カメラ最大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など28団体・企業に禁輸措置を課すと発表。トランプ氏は交渉再開直前に再び圧力をかけてみせた。

直前の6日には劉氏が「中国は補助金など構造改革を巡る提案はしない」と述べたと報じられ、中国に産業政策の抜本転換を求める米政権内の対中強硬派は神経をとがらせていた。

中国もトランプ政権が「人権カード」を切ったことに強く反発する。中国商務省は8日夜に「『人権』の名を借りて中国企業を制裁し、粗暴に内政干渉した」と強く非難し、対抗措置をほのめかした。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは8日に「中国交渉団はワシントンでの滞在計画を短縮した」と報じ、閣僚級協議で歩み寄る機運は高まっていない。

2018年7月に始まった関税合戦はエスカレートが止まらない。トランプ米政権は今月15日、2500億ドル分の中国製品に課す関税率を25%から30%に引き上げる予定だ。中国の官製メディアは8日に「米国が追加関税をかけても交渉は続ける必要がある」と、関税発動を「覚悟」したかのような評論を載せた。

これまでは中国からの輸入依存度が高いスマートフォンやノートパソコンなどは制裁関税の対象から外していたが、12月にはこれらのハイテク製品にも15%の追加関税を課すとしている。

両国経済は景気減速が目立ってきた。米国は米サプライマネジメント協会(ISM)が調査する製造業の景況感指数が、2カ月連続で50を割り込んで「不況」となった。同指数は景気の先行指標の一つとされ、貿易戦争による輸出の落ち込みが大きく響いた。

中国も8月の工業生産の伸びが前年同月比4.4%増にとどまり、リーマン・ショック直後の09年1~2月以来の低さに沈んだ。製造業の景況感指数は5カ月連続で50を下回って「不況」のままだ。とくに「新規の輸出受注」は1年4カ月連続で50を下回っている。

景気不安が貿易戦争の打開につながる可能性もある。中国は9月中旬、米国から輸入する大豆や豚肉の報復関税を解除する方針と報じられた。中国では豚肉など食材の高騰が目立つ。米中のチキンレースは両国の経済の傷を深めており、関税合戦の長期化はトランプ政権、習体制ともにダメージとなる。

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