トヨタ、自動運転EVが五輪で初仕事 車内空間大きく

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2019/10/9 13:30
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トヨタ自動車は9日、2020年の東京五輪・パラリンピックで実用化する自動運転電気自動車(EV)の車両の詳細を発表した。五輪では選手村内での選手送迎向けに導入される。小型の自動運転バスとしては「当たり前の構造」で特徴的な技術はない。自動運転技術開発ベンチャーのティアフォー(名古屋市)と組んで外部と連携し、大舞台で選手らを安心・安全に運ぶために細部を作り込んだ。

トヨタの東京五輪仕様の自動運転EV「イーパレット」

トヨタの東京五輪仕様の自動運転EV「イーパレット」

発表したのは「イーパレット東京2020仕様」。18年1月に米ラスベガスで開かれた家電・技術見本市「CES」でコンセプト車を発表して以来、人を乗せる実用化車両としては初めての発表となる。車両の大きさは長さ5255ミリメートル、幅2065ミリメートル、高さ2760ミリメートルの20人乗り。最高速度は時速19キロメートルで航続距離は150キロメートルだ。

「身長2メートルの人から、車いすの人まで、様々な人が便利に乗り降りできるよう、車内の空間を最大にすることを心がけた」。イーパレットの開発を統括してきた牟田隆宏主査はこう説明する。「CESで発表したコンセプトやデザインが好評で、そこから詳細を詰めていったトヨタとしても前例のないパターンだったかもしれない」と開発を振り返る。

東京五輪では燃料電池車(FCV)や自動運転車など3千台以上の車両を提供する計画だ。世界中が注目する大舞台で、未来のモビリティー(移動体)社会向けの技術力をアピールする。その核の1つがイーパレットだ。選手村で1周2キロメートルほどのルートを十数台が走りまわり、選手や大会関係者を送迎する。公道は走行しない。

東京五輪を通じて「イーパレット」ブランドを訴求して新たなビジネスチャンスを模索する狙いもあるとみられる。イーパレットはコンセプト車の初披露の時、移動するだけの目的でなく、物流や物販など様々なサービスに使える裾野の広い車両として提案した。

実際、コンセプト車を発表した際には米アマゾン・ドット・コムや中国の滴滴出行、マツダ、ウーバーテクノロジーズ、ピザハット5社とイーパレットの商業化で協業することを発表している。ソフトバンクとの新たなモビリティーサービスの開発でもイーパレットを使うことを想定している。

今回の東京五輪仕様では自動運転技術でベンチャーのティアフォーとタッグを組んだ。自前主義にこだわらずCASE分野を開拓する姿勢も改めて鮮明にした。ただ関係者は「イーパレットには今回のシステム以外、いろいろな自動運転システムを搭載することも想定している」と今後も幅広く外部と連携する姿勢を説明する。

一方で、東京五輪に照準を合わせ時間軸を重視したため、部品開発を深掘りすれば一段と空間を大きくできるとみられる。今回の五輪仕様ではエリア限定の高精度地図を作製したほか、高性能センサー「ライダー」を5つ、カメラや音波センサーも搭載して、安全性と精度をできるだけ高めた。用途を限った特注品を様々な場面で投入し、より柔軟性の高い車両向けの技術を着々と蓄積する狙いだ。

ただ小型の自動運転バスとしてみると競争は激しい。「搭載する技術は世界に対して突出するものがあるわけではない」。トヨタの技術者はイーパレットの内情を明かす。仏ナビヤ社製の車両は、トヨタがイーパレットを発表した18年1月のラスベガスで既に見本市来場者の送迎のために公道走行での実証実験を実施した。東京五輪を皮切りに使える場面での事例づくりを加速して、データを蓄積することが欠かせない。

(湯沢維久)

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